むーしゅ

シェフ 三ツ星フードトラック始めましたのむーしゅのレビュー・感想・評価

3.1
 「アイアンマン」シリーズや実写版「ジャングル・ブック」の監督Jon Favreauが監督・脚本・製作・出演を担当した作品。Jon Favreauといえば雇われ監督のイメージが定着していますが、本作は初期作品"Made"以来久々の監督&脚本を担当した作品です。

 ロサンゼルスの三つ星レストランで総料理長を務めるカールは、オーナーの命令で出したメニューを評論家から酷評され、それに対しtwitterで反論したことでネット上で炎上してしまう。レストランから解雇されたカールは、元妻イネズの勧めで元同僚のマーティン、息子のパーシーと三人でフードトラックの営業を開始するのだが・・・という話。SNSで炎上した主人公が、息子の力を借りてSNSで人気店になるというかなり現代的な物語。SNSや自撮りの映画上での表現方等を見るとオンライン世界のスピード感を上手く取り入れており、やっぱり映画を撮り慣れているなと感じがしました。

 さて冒頭にも書きましたが本作はJon Favreauが久々に監督&脚本を担当した映画で、勢い余って主演まで担っており、まさに自分が作りたかった映画を作ったということなのだと思います。実際まわりの出演者も自身の代表作「アイアンマン」シリーズからScarlett JohanssonとRobert Downey, Jr.を連れてくる等、自分が思うように撮れる布陣で揃えています。一見インディペンデント映画のようですが、それにしては豪華な出演者達のおかげで全体的に華やかな作品となっており、一周回ったインディペンデント映画と言えるかもしれません。CGフル活用&予算ばっちりといういつものJon Favreau監督作品と違い、監督自身の前のめりな意志が主人公カールの気持ちに上手くかさなり、見ているとぐいぐい攻め込まれている気分になりました。ちなみに本作の息子役Emjay Anthonyは、後に「ジャングル・ブック」にも起用するなど、本作の人脈も後の作品に更に活かしているようです。

 とはいえストーリーは少々退屈です。開始早々物語の起承転までが怒濤のように進みますが、フードトラックを走らせてからはゆるやかな結があるのみ。前半の疾走感は良かったのですが、後半に物語としての見所が無く「キューバサンドイッチが美味しそう」だけで映画をもたせようとしています。ありがちな展開ではありますが、子供を火傷させてしまったことで元妻が怒り狂い、子供を連れ帰ってしまい父と息子の友情にヒビが…等々、もう一展開あれば深みが生まれストーリーを楽しむ作品になれたのかなと思うところです。ラテンのノリとフードトラックという組み合わせから産まれたスピード感を楽しむ映画としては非常に面白かったですが、それ以上にはなれなかった作品ですね。Jon Favreau監督には申し訳ないですがやはり潤沢予算の雇われ監督が向いていると感じました。

 ちなみに本作は同時期に製作されたBradley Cooper主演の"Burnt"(邦題は「二ツ星の料理人」)と、Chefというタイトルの取り合いになったそう。結果的には本作が勝ち取ることになりましたが、正直別のタイトルでも良かったのではという内容だったこともあり、譲っても良かった気がしています。むしろ"Food truck"の方が良いかもですね。
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