つかれぐま

百円の恋のつかれぐまのレビュー・感想・評価

百円の恋(2014年製作の映画)
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これは、痛い。

主人公・一子は初めてボクシングを見て感動するが、試合後に健闘を称えあうという、その気持ちが理解できない。これは32才までの引きこもり暮らしで、相手の気持ちを慮る、否、少しでも想像することを拒否し続けた結果であり、それがまた本作前半で男たちから酷い目に合わされる原因でもあるという因果応報。

色々あって、自分に向き合う決心をした一子のボクシングは、メキメキと上達していく。この辺のドライブ感が最高。やっぱりスポーツ映画にトレーニングのモンタージュは不可欠。肉体と精神の変容を(単なる肉体改造だけでなく)むしろ、その演技力で表現する安藤サクラはバケモノだ。

そんな一子のボクシングも、試合では全く通用しない。対戦相手との「コミニケーション」とも言える試合で、一子は長い引きこもり生活のツケを払うことになる。自分と向き合っただけでは絶対に超えられない厚い壁。だから試合後、対戦相手への「●●●●●」の一言は凄い成長で、大きな意味があることなんだけど、一子の中でまだこれは「無意識の言葉」に過ぎず、「勝ちたかった」という悔しさの感情にかき消されてしまう。

決してハッピーエンドではないが、微かな希望のラスト。

本作の監督&脚本コンビのリターンマッチ「アンダードック」が楽しみだ。今度は安藤サクラというモンスターは不在だが、さてどうなるか?