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百円の恋のorimarksのネタバレレビュー・内容・結末

百円の恋(2014年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

サクラさんの演技が観たくて。
姿勢や歩き方、口調、目つき·体つき、一つ一つの表情や動作まで、憑依としか思えないほどの熱演に釘付けでした。
あんなに「他人になれる」ってどういうこと.... ボリボリと背中を掻くイチコが映った瞬間からもうやられてました。

マイミククソオヤジをはじめヤバいやつだらけの100円ショップ、壁も床も薄っぺらな安アパート、煙たいタバコ、誰が見ても幸せになれなそうな恋… 抜け出そうにも抜け出せない、皆どこか諦めの臭いを漂わせている日本社会の底辺が描かれる前半部。なんとも言えない苦みが喉の奥に広がります。

後半部は、導かれるように始めたボクシングに没入し変わっていくイチコにフォーカス。
情けなさ·悔しさ·やるせなさ·怒り·悲しみ·声にならない叫び…すべてのグチャグチャした感情が「勝ちたい」という一点に集約し、動物的なエネルギーで突き進む。寡黙に鍛錬を続ける姿から伝わってくるのは、内側でぐらぐら煮立つマグマのような闘志と執念でした。

そして過去の自分を見限った家族や元カレ(?)が見守る中、リングに立つ最後の試合。
倒れても倒れても立ち上がって戦い続ける姿に涙が溢れてきたけれど、どうしても目が離せませんでした。
自分のすべてを賭けて戦うイチコが、かっこよくもあり不憫でもあり頼もしくもあり守ってあげたくもあり... 複雑な気持ちでした。

お話がすごく好み!というわけでもないですが、サクラさんの熱量と表現力は点数をつけられないほど、素晴らしかったです。
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