自堕落で実家にのさばっていた負け犬・一子。内弁慶で家族にも呆れられ、外に出ても惨めな思いをしては睨むだけ睨んで戦えないような日々。彼女の中に溜まりに溜まるフラストレーションが、観てる側の私の数々の悔しい記憶まで呼び起こしてきて一緒に悔しくなっちゃったな。一番の原因が紛れもなく自分だからこそ、悔しくて惨めになるのほんとわかる。
ボクシングへの挑戦はまるでそのフラストレーションをガソリンにしたかのような、決して綺麗ではない地を這うような戦いなんだけどそれがもうめちゃくちゃカッコいい。醜くもありカッコいいのだ。人生やられっぱなしの人間がちょっと奮起したって勝てるわけじゃないんだよって厳しいメッセージも感じるけど、負け戦だって戦わないより100倍マシ。勝ちたかった、悔しかったって言葉にして涙を流せることがどれだけ苦しくて強い人間にしができないことなのか今ならわかる。
100円程度の人間の100円程度の話かもしれないけど、その何倍も観る価値のある映画であり恋だった。「映画」の醍醐味が詰まった作品。
間違いなく安藤サクラの代表作。そのストイックさは一子をも上回るでしょう。変わりゆく贅肉と筋肉、話し声、目つき、姿勢。これだけの人の成長を撮影期間2週間で描いたなんて信じられないな。