次男

ゴーストスープの次男のレビュー・感想・評価

ゴーストスープ(1992年製作の映画)
4.0
岩井俊二監督の初期作品で、1時間未満の中編。とても良かった…。岩井さんの、ファンタジックでメランコリックでコケティッシュな部分が存分に出てて、とてもとても素敵。「素敵」という言葉が、とても似合う素敵さ。ラストシーンなんて素敵の塊だったなあ。

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諸事情で予定より早く引っ越してきた主人公。新聞やら受信料やら宗教やら、どさどさと来訪があるが、最後に押しかけてきた五人組はとても不思議な一団で…。

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とてもとても軽快に物語は転んで、その軽い語り口の中で自由に動き回る鈴木蘭々さんがとにかく可愛くて素敵で。こういうノリ、失敗するとひたすらサブくなりそうなのに、成功してるからひたすら愛しくて楽しい。

巻き込まれ主人公と、鈴木蘭々さんたちのさりげない接点がわかってからは、とにかく暖かい気持ちが込み上げて込み上げて、しまいには目頭じんわりしてしまいました。

冗長でもなく、尺不相応なことを語ることもなく、中編作品としてお手本のような。素敵でした。クリスマスの話ということで、少し早いけど時事的にもぴったり。


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ネタバレ
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鈴木蘭々さんたちが作るゴーストスープ。地縛霊の成仏を手伝うという、その設定だけ聞くと胡散臭すぎるはずなのに、それをそうさせなかったのが岩井節か。適度に適切に、物悲しいファンタジーの香りが。地縛霊の哀しみなんて全然前に出してこないのに、スープを飲んでる霊のみなさんを観てたら、勝手に想像が膨らんで。

最高にお気に入りなのが、ラストシーン。「飛んでみてよ!」と言う主人公に、笑うふたりの天使。並の作品なら、ニコッと笑って意味深に終わりか、なにかを見たであろう主人公のリアクションで終わりか、それかほんとに飛ばしてしまいそうなところ、この作品では「飛んでるようにいつまでもはしゃぐふたり」。カーペンターズの「(They long to be) close to you」も相まって、もうはっきりと「あ、絶対これが、正解だ」と思った。素晴らしい、素晴らしいラスト!

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リメイクするべきでは…とか考えたけど、この作品の素敵さはこの時代の古さとか、蘭々さんの唯一無二さとか、4:3のアス比とかが絶妙に相まってのことだと思うから、無理だな、きっと奇跡的な作品だな。
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