emily

赤い手帳のemilyのレビュー・感想・評価

赤い手帳(2011年製作の映画)
3.0
ミステリー作家のルソーは立ち寄った街で、地元のスター・キャンディスの死に遭遇する。自殺として警察は断定していたが、ルソーは殺人事件の匂いを嗅ぎつけ、自身の小説の題材にと独自に取材を通じて事件解明を試みる。するとマリリン・モンローの人生と似ていることに気が付く。消えた赤い日記に隠された真実とは・・

 一面真っ白の雪景色に包まれ、死んだキャンディスの声により綴られる日記と、その回想。回想部分はルソーが文章から想像するものではなく、まるで彼女が生きているかのようにキャンディスの声により綴られ、時折彼女がカメラのほうを向き、想像とも回想ともいえる不可解な描写の仕方で翻弄される。

 色彩においても白一面の中に赤をスパイス的に施し、意味深に上から被写体を捉え、スタイリッシュなイメージ像が交差し、幻想的な音楽が寄り添う。幻想感の中に現実的に命を狙われていく日々を過剰なサスペンス調ではなく、日常の中で淡々と描き、抜群の構図に目を奪われる。真実は終盤になりあっけなく語られ、日記には全く記されていなかったであろう、彼女も知りえなかった真実が誰の目線かもわからないまま語られていく。そうして現実に夢や幻想がのっかっていくのだ。赤い日記がルソーの小説に繋がり、また彼女の人生も誰かの手により文章として残っていく。

 消化不良と言えばそうなのだ、謎多きまま終わっていくからこそ、神秘的に輝くのだろう。
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