JunIwaoka

JOYのJunIwaokaのレビュー・感想・評価

JOY(2015年製作の映画)
4.0
2016.4.10 @ iTunes Store On Demand

期待外れという気持ちは分かるけれど、個人的にはすごいグッとくる話だった。母親が家事も仕事も子育てもただひたすら奮闘する映画であって、"世界にひとつのプレイブック"のようなエキセントリックな可笑しさや、逆転満塁ホームラン的な痛快さはないけど、素晴らしい映画だと思う。まぁデヴィッド・O・ラッセルの新作で、ジェニファー・ローレンス主演、ロバート・デ・ニーロ、ブラッドリー・クーパー共演なら否が応にも"プレイブック"を期待してしまうのも分かるんだけどね。

近年の嫁怖い映画でよく語られているように、男というのは肝心なときにヘコタレてしまう生き物だから、誰か支えてくれる存在がいないとマトモにいられない。そんなナサケナイ男に対して女性は母性というのか、家族という守るべきもののために、どんなに辛いときでも俯いたままではいられない。ジョイが誰にも頼らずに自分の意思で覚悟を決めて、銃を手にするときの勇ましさといったらもう見惚れする。テレビ通販番組で華やかさのない実用的なモップがヒットしたのも、家族のために奮闘する母の姿に共感があったからだろう。
それでもビジネスの理不尽さの壁に何度も何度もぶつかって努力が報われない姿は見てて苦しくなるし、いい加減誰か救いの手を差し出してあげてーなんて願うけど、彼女にはそんな弱音はなくて、ただ歯を食いしばって自分の力で立ち上がる。ダラスに降る粉雪はダンスコンテストの奇跡に比べたら些細なものだけど、まるで自分の母親を見ているようで誇らしい気持ちになった。実在するジョイ・モンガーノがモデルになっているんだけど、ジョイという名前がいいなって思た。

今作のジェニファー・ローレンスも相変わらず強い女であることは間違いないけど、ぶっ飛んだところななく辛さも抱える。むしろぶっ飛んでいるのはジョイの周りにいる人たち(特にデ・ニーロがね。笑)でそんな人たちさえ非難することなく描いちゃうのはこの監督だからなんだろうな。
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