ゲイリーゲイリー

はじまりのうたのゲイリーゲイリーのレビュー・感想・評価

はじまりのうた(2013年製作の映画)
3.5
ミュージカル映画は苦手だが、音楽映画は大好き。
そんな私だからこそ、ジョン•カーニー監督の音楽に対する溢れんばかりの愛とリスペクトにとても共感してしまう。

どれだけ落ち込んでいようとも、どれだけ気怠くとも、どれだけ不安に飲み込まれようとも音楽があれば景色は一変する。
このままズブズブと沈んでしまいたいという時であっても、音楽は否定も肯定もすることなくそっと寄り添ってくれる。
これまで何度音楽に救われてきただろう。

そんな音楽への畏敬の念がこれでもかというほど込められた本作だからこそ、サウンドトラックのクオリティも超一級品。
オリジナル劇中歌とは思えぬほど、どの曲も個性があって耳に残る。
(個人的にはキーラ•ナイトレイが冒頭で弾き語りしていた楽曲と、ヘンリースタインフェルドがギターソロを弾く楽曲がお気に入り。)

「平凡な風景が意味あるものに変わる。
陳腐でつまらない景色が美しく光り輝く真珠になる。音楽でね。」というダンの台詞の通り、私も音楽によって何度も景色を美しく塗り替えられてきた。
そして本作にも、そうした景色を塗り替えてくれる魔法がある。
「For Once in My Life」を聴きながら帰路に着く私の目に映る景色は、確かにいつもより輝いていた。