あんがすざろっく

はじまりのうたのあんがすざろっくのレビュー・感想・評価

はじまりのうた(2013年製作の映画)
5.0
うわ〜〜なんだよもう‼️
もっと早く見たかったよーーーーーー‼️
激しく自分を責めましたね。


ミュージシャンのデイブと、恋人のグレタは、イギリスからアメリカのニューヨークへやって来る。グレタが作曲し、デイブの歌った曲が映画の挿入歌として大ヒット、デイブがレコード会社と契約したのだ。
最初は二人の生活も上手くいっていたが、デイブの浮気が発覚、失意のグレタは友人スティーブのもとへ転がりこむ。
スティーブのライブに招かれ、渋々ながら弾き語りを披露するグレタ。
客には全く受けなかったが、そのステージを見ていたレコード会社のダンから、CDを作らないかと持ちかけられる。


ダンもまた、失意の中で酒に溺れていた身。
レコード会社は自分が立ち上げたものだが、プロデューサーとしてもう何年もアーティストを発掘できず、ヒット作も作れていなかった。
結果、会社の右腕からクビを宣告されてしまったのだ。
そんな中、たまたま入ったバーで、グレタの演奏と出会う。
彼女は無愛想で、弾き語りの歌詞が重かったこともあり、客からの受けは悪かったが、ダンにだけは聞こえた。
彼女の後ろで響くドラムの音、ピアノの音、チェロの音、バイオリンの音。
ダンの頭の中には、確かに音楽が鳴り響いた。
迷わずダンは、グレタにCDを作らないか、と持ちかける。




何だよこれ…。
キーラ・ナイトレイがキーラ・ナイトレイに見えない。
新鋭シンガーソングライターのデビュー作かと思ったよ。
マーク・ラファロ、どこからどう見てもアル中じゃんか。酒が切れると緑色の化物に変身するとか?

すいません、笑い話にしてしまいましたが、そのくらい二人がキャラクターに入り込んでいるんです。

ニューヨークで出会った二人が辿る、最高の音楽への旅。
前述のオープニング〜グレタとダン、両方の視点〜から、一気に作品に引きづり込まれ、この時点でもう完璧にマイベストに入れたい‼︎と小躍りしたくなるような映画でした。
いやホント、ずっと踊りたくなる気持ちで見続けましたよ。

実はキーラ・ナイトレイ、この作品に出るまで楽器を演奏したことも、歌ったこともないんですって‼️
え〜〜〜⁉️それであの上手さ⁉️
監督の選択眼も凄いし、撮り方も良かったんだろうなぁ。

マーク・ラファロが屋上のライブに飛び入りするシーンも楽しかったですね。
本当にプロデューサーっぽく見えてくる。
色々なアイデアをどんどん取り入れていくレコーディングシーンは、マークのアクティブなエネルギーが満ちています。

デイブって、アダム・レヴィーン本人だったんですね。
いや、マルーン5は好きなんで聞いてたんだけど、
歌ってる本人は見たことなかったんで。
声が似てるから吹替かと思ったら…。
なかなかの好演でしたね。

グレタの友人スティーブに、ジェームズ・コーデン。バラエティ番組の司会をされている方なんですね。
このスティーブがイイ‼︎
失恋したグレタが訪ねた時、彼女が口を開く前に事情を察し、しっかりと抱きしめてくれるんです。
きっとスティーブには、グレタとデイブの行く末が見えていたんですね。
スターが通る道を分かっていたのは、やはりスティーブもアーティストの感性を持っていたからなんでしょう。
彼がいなかったら、グレタはずっと塞ぎ込んでいたかも知れません。

ダンの娘にヘイリー・スタインフェルド。
女優さんでもあり、歌手でもある訳ですから、
このキャスティングは絶妙。
ビルの屋上での演奏シーンは、息をするのも忘れるくらいの鳥肌もの。

ダンの元奥さん役はキャスリン・キーナー。
久しぶりに見ました。
この二人の展開も、あまりにも素晴らしい。



作品の中の印象的なシーンと言えば。

デイブがグレタに、NYの空気に触れたら、いい曲が書けたと聴かせるシーン。
聴いているうちに、徐々にグレタの表情が曇る。
そしてデイブに平手。
いきなりのことにデイブは面食らうが、その後にポツリ。
「まるで読心術者だ」

歌詞の変化。曲調の変化。
これだけでグレタは、デイブの心変わりを見抜いてしまったんです。
ある意味で、音楽の持つチカラをまざまざと見せつけられ、その説得力たるや、実に強烈なワンシーン。

ダンとグレタがお互いのiPodのプレイリストを聴きながら、夜のNYを夜通し歩き続ける
シーン。
ドーリー・ウィルソンの
「As Time Goes By」。

もう、羨まし過ぎて。
こんな夜を、誰かと過ごすことができるなんて。
お互いのプレイリストをスプリッターで聴き合うなんて、自分のうちを曝け出すようなもの。
なかなか恥ずかしくて、異性には簡単に出来るものじゃありません。
言葉よりも伝わる、音楽のチカラ。
そりゃ踊りたくもなりますよ。
そして聴こえるのは、スティーヴィー・ワンダーの「For Once in My Life」。
もうマジックです。



これは、スターが生まれる話ではありません。
一人の女性が、音楽を通して仲間と出会い、デモCDを製作して、レコード会社に売り込むまでの話。
デモだから、やりたいことだけ。音楽を楽しむことだけ。
会社のしがらみも、スターの挫折も、プレッシャーも、アルコールもドラッグも無し。

だからこそ描かれたのは、純粋に音楽を楽しむ幸せ。
純度100%の音楽の魔法とチカラ。

この作品の伝えたかったことは一つ。
「音楽のチカラ」。
これ以上なくシンプルで、これ以上なく力強い。

映画のラスト、完璧過ぎ。
何なんですか、この素晴らしさ。
エンドクレジットも、おまけ以上のものです。

監督はジョン・カーニー。
「ONCE ダヴリンの街角で」で話題をさらい、その後本作「はじまりのうた」を発表。
最初は全米で5館だけの上映だったのに、あれよあれよという間に口コミで人気が広がり、1300館での上映に拡大されました。
本作の後の「シング・ストリート 未来へのうた」でも音楽をテーマに取り上げています。
それもそのはず、監督はもともとバンドでベースを演奏していて、PVなんかも製作してたらしいです。
なるほど、ミュージシャンだからこその説得力があるんですね。

エンドロール前に「ジムに捧ぐ」とありましたが、これは監督のお兄さんのことのようです。
音楽同様、カーニー監督に多大な影響を与えたのがお兄さんのようで、「シング・ストリート」では主人公を支え、背中を押してくれる兄貴役に、自らのお兄さんの姿を投影したのでしょう。


なんかね、色々ネット見てたら、どうも監督は
この作品のキーラにあまり納得できてなかったらしいんですね。
監督だから、自分の作品に色々言うのは構わないんですけど…。
確かに、素人っぽさがもう少しあった方が良かったかなぁとも思いましたが、この記事見るまでは、キーラ・ナイトレイ最高‼︎と思ってたので、
こればかりは「監督〜そんなこと言わないでよ〜」と言いたくなってしまいました。
とても素晴らしい作品だったので尚更。
見終わってこんなに幸せになれるんなら、僕は一映画ファンのままでいい、と思いましたよ。


嬉しくて叫びだしたくなる気持ちを、周りの人達にこの作品をすぐにでも薦めたくなる気持ちを、どう抑えたらいいんですか?
誰か教えて下さい。
寝る前に見たら、興奮し過ぎて眠れなくなっちまいましたよ。
職場の映画好きな女の子に早速オススメしました。
間違いなくマイベストムービーにランク入りです。
あんがすざろっく

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