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チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛のtaruponのレビュー・感想・評価

3.9
原作はフェルメールの世界を小説にしたいと願ってかかれたものだそう。
17世紀前半のオランダ、修道院で育ち、後継ぎを産むことを期待され初老の富豪の商人サンツフォールトに後妻として迎えられたソフィアと、肖像画家ヤンとの恋、サンツフォールト家の使用人マリアと魚の行商人ウィレムの恋、それに当時希少なものであったチューリップの球根の投機熱が絡みある物語。

まず、何よりも画面全体がレンブラントの世界観、そしてヤンに描かれるソフィアが、フェルメールを彷彿とさせる。
そして全体に色合いが少ない画面の中で、チューリップの白、黄色、ソフィアの衣装の青がすごく鮮やかで美しい。そして、それよりも若干控えめな輝きだけれど、花瓶など(おそらくデルフト陶器?)のブルー&ホワイト、真珠の白なども彩りを添えるし、東洋貿易全盛期だった当時の時代の空気を感じさせる。
ストーリーは、恋人同士の誤解からのすれ違い、綱渡りのような妊娠の偽装、そこから結末にいたるまでどんどん展開していき、ちょっとドキドキしつつ物語の世界に引き込まれていく。
ただ、誰もが後ろめたい部分を持ち、誰もが悪役ではなく、その心情と結末は切なさと私はある種の納得感のようなものを感じた。

(以下、若干ネタバレ含みます)


この話は、メインはソフィアとヤンの恋、そしてそれに並行するマリアとウィレムの恋の話なのだが、どうにもサンツフォールトに感情移入してしまう。
後継ぎほしさに若い娘を修道院からお金で迎えて、とにかく後継ぎがほしいからひたすらに励んでいるし、そこだけ取り出すと何とも言えず悪役のオヤジのような感(笑)はあるが、その事実はあれどソフィアのことを大切にし夫婦として暮らす中で愛情を持っているのも事実だし、商人として周りのチューリップの投機に惑わされずしっかりとした商売をしているし、出産で亡くした前妻に対するトラウマ、そしてまたもや出産で妻を失ったことによる嘆きや赤ちゃんを慈しむ様子にウソはない。最後の身の処し方も男前だし。ソフィアと気持ちが通じそうでやはり通じ合えなくて、それは仕方ない話ではあるけれども、なんか切ない。

ソフィア役のアリシア・ヴィキャンデルは、すごくすごくきれいで、見ているだけで目の保養。ヤン役のデイン・デハーンも結構好き。

そして、何よりも、チューリップおそるべし。ちょうど、日本では江戸初期の頃だけれど、日本と交易していたオランダ本国ではこんなチューリップ投機で沸いたりしていたんだなぁと感じた。
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