ゆみこ

ゆけゆけ二度目の処女のゆみこのレビュー・感想・評価

ゆけゆけ二度目の処女(1969年製作の映画)
4.8
1969年。
学生運動が盛衰し、フランシーヌ・ルコントが焼身自殺を図り、シャロン・テートが殺された年。
この時代の閉塞感を「密室」という空間に喩えたこの作品は、狂気ともとれる展開と表現で描き出していた。

付きまとう陰鬱さと時折挟まれる自由への求心、解放への帰結。
これはまさに時代の鏡であり、この時代に生まれるべくして生まれた作品だと感じた。


黒く冷たいコンクリートと白く柔らかな洗濯物の対比。
輪姦からの「おはよう」。
「殺してよ」、「殺さない」のやりとり。
ぐるぐるとただただ回る階段の画。
嘘みたいな血糊。
BGMのフリージャズ。ガレージ。サイケデリック。

それら全てが最高で愛おしかった。

その中でも特に最高なのが道男で、彼の表情や発する言葉、出で立ち全てを愛でたい。
女を見つめる道男の瞳の奥の優しさとそれ以外の連中に見せる冷徹な眼光。
多くを語らない彼の顔にぞくぞくした。
女の過去や思想は作中で描かれていたが、彼が愛に渇望した経緯や性に嫌悪を示す所以を描いていないのも良かった。

道男の返り血で汚れた丸眼鏡と白シャツを綺麗に拭いてあげたいし愛を知らない彼に愛を教えてあげたいし殺すに値する理由を見つけて殺されたいと思った。
ゆみこ

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