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岸辺の旅のsokbuのレビュー・感想・評価

岸辺の旅(2015年製作の映画)
3.8
3年振りに失踪していた夫(浅野忠信)が帰って来る。夫は幽霊なのだが、夫婦の会話はあまりにも日常的すぎる。ごく当たり前のように、妻(深津絵里)は夫が失踪中世話になった人々に会いに行く旅に同行する。出会った人々の中には、すでに亡くなっているのに、それに気づかず、日常生活を送っている人もいて、生者と死者の生活の境界が曖昧で、それを登場人物達は当たり前のように話をしていて、それが魅力的だったりする。

思えば、街中を歩いている数多くの人々の中に、死者の思い出を当たり前のように抱えて生活しているんだろうなあと、気付かされた。いつか、薄れていくその人との思い出を我々は常に心の中に持っている。その人との思い出によって前に進めなくなることだってある。そしてやっと前に進めるように、残された者達が自立できるようになった時に、死者の姿はいつの間にか消えていくんだろうな。それは切ないことなんだけれど、時間の流れの中で、自然とそうなって、止まっていた時間が動き出す。そんなイメージで映画を観ました。

個人的なことだけれど、3年前に突然死んでしまった元彼のことを思い出した。幽霊って、なんて優しいんだろう。
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