役人者

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)の役人者のレビュー・感想・評価

4.2
ずっとワンカット長回し風の2時間。日常描写も劇中劇も、主人公目線の話も脇役目線の話も、全てが連続性のある空間の中で進む。マイケルキートンやエドワードノートンが、役者の役として演技について語るし、BGMかと思ってたパーカッションの奏者がいちいち画面に登場するし、視聴者の現実もその連続性に巻き込まれる。日常描写と劇中劇の境界が曖昧になっていくのと同じように、この映画に出てる役者と役の境界も曖昧になっていく。そんな感覚が、妄想と現実が混濁する主人公リーガンの思考と重なる。それは、フィクションの中で真実の命を生きるという、役者の理想と孤独を具現化してるようでもある。
そんなモチーフを、この映画は皮肉と哀愁たっぷりに運用する。凋落した役者の起死回生を賭けた想いも、舞台の上でしか真っ当に心が動かなくなってしまった演技派俳優のこだわりも、世間のさしたる関心事ではないし、世界にさしたる変革をもたらさない。心を砕いたポイントとは関係無い、不本意な偶然の産物によって、大衆は動かされる。世間から取り残される、芸術という名の孤独。俳優達に限らず、評論家もプロデューサーも浮浪者もみんな、自分で自分に課した思い込みを追求しながら、同じ世界の一つ屋根の下で死んでいく。それに意味があるかどうか決められるのは、結局自分自身だけなんだろうな。
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