リッキー

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)のリッキーのレビュー・感想・評価

4.5
900本目。
いつか鑑賞しようと思っていましたが、ちょっと難解そうな予感がしていたため、今まで敬遠していた作品です。
この作品の斬新なところは断片的な映像を継ぎ合わせるのではなく、長まわしの迫力とスピード感がある撮影方法であり,字幕が黄色だったことも不思議な感じでした。

キャスティングはマイケル・キートンが主演で,エドワート・ノートン,エマ・ストーン,ナオミ・ワッツなどの他の作品では主演級の俳優が脇を固めています。なんといってもマイケル・キートンの存在感が大きかったです。

序盤は冷静に鑑賞していましたが、マイケル・キートンとエドワート・ノートンが劇場から屋外へと出ていくシーンあたりから,自分の中に変化が現れました。
延々と続く言葉の応酬の間には挿入曲もなく,響き渡るドラムの音だけで主人公たちは鼓舞され,高揚感で満たされていきます。そのブルース調のドラムのリズムに相まって、私も軽い興奮を覚え、作品に引き込まれていきました。
これが長まわしの撮影における効果なのかと感じました。

主人公は昔「バードマン」というアメコミのヒーローを演じて一世風靡したにも関わらず,役者としては落ち目の状態で,自らが主演する舞台でもう一度栄光を掴みたいと必死です。主人公が触らずとも物をずらしたり,空中を飛んだりするなどの超能力を使えたり,道端や劇場内でドラムを叩く男,過去に演じた「バードマン」の声または実物が見えたりするのは相当精神的に追い詰められていることを示唆しています。

この主人公はマイケル・キートン本人を投影しており,マイケル・キートンが現実に主演した「Batman」のオマージュ的なつくりになっているように感じました。幻聴で聞こえる「バードマン」の声もBatman風だし、「Batman」と「Birdman」と名前も似てますよね。
作品中に登場したバードマンの型は彼が演じたバットマンの型から作ったものらしいです。

出演者が喋りながら移動し,そのリアルな光景を途切れなく見せるという手法は綿密な計画がなければ成立しません。各シーンにおける一人の台詞が長いため,NGの数も相当あったことが想定されます。撮り終えるまで俳優陣、まわりのスタッフも相当苦労したでしょうが,それだけスタッフのチームワークの良さが感じられ、アカデミー賞の「作品賞」、「撮影賞」、「脚本賞」、「監督賞」の受賞は当然だと納得することができました。

鑑賞後、満足感がこみあげてきましたが、果たして私は監督の意図を正しく感じ取ったかは自信がありません。落ち着いて何度も鑑賞したいと思える作品と出会えました。
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