こうん

メニルモンタン 2つの秋と3つの冬のこうんのレビュー・感想・評価

4.1
“メニルモンタン”となかなか暗記できずに受付で若干戸惑いました。
「め、め、め、メニモル、メニルモ、メニ…(タイムテーブルを指さして)これ1枚ください」
パリ観光で人気のエリアなんでしょうか。勝手に「代官山みたいなもんだろ(いけすかねぇ)」と合点して観たけれども、“町”感はほとんどなく、男と女がウロウロする青春ドラマでした。
今どき「ヌーヴェルバーグの影響が…」という言説もナンだと思うので(世の中の映画の半分が半世紀以上の前の“新しい波”の影響を無意識に受けているんじゃナイデスカネ)、そこらへんはオミットします。面倒くさいし。

で、本作はパリの片隅に棲息する複数の男女の右往左往を、登場人物たちの独白で語っていく、いわば“回想劇”とも呼ぶべき変わったナラティヴの映画でした。
いわゆる葛藤(ドラマ)を華麗にスルーして、ついでに活劇性もカットアウトして、なんというか、反映画的だぜ!という佇まいの映画になっていて、“映画になりそう”な面白い部分は各登場人物の口から淡々と語られるのみです。

それをつまらないととるか、面白いととるかは観た人の感性に拠るでしょうけど、僕はとっても面白かった。
まず、各登場人物の定まらなさというか大人になりきれないオトナの不安定さが、その独白に妙なユーモアを醸し出し、それに付随する面白い部分を欠いた回想が、却って滑稽感を増していると思うのです。
この題材、この登場人物たちの立ち位置、そして語られる身の上話のマンガっぽさや現実的な局面に、この語り口が絶妙にマッチしていると思うのです。
なんてことない青春譚なんだけど、この語り口によって程よい距離感が生じ、本来は持ち得るだろうその深刻さとは無縁に、軽さと可笑しみと、もっと俯瞰して彼らを眺める相対感が生まれて、なにか身近なおとぎ話を観ているようで、鏡を見ているようでもある…という感じが生まれていると思うのです。

それが面白かったし、約50篇から成る構成もテンポが良く、大変に心地よかった。

こういうタイプの先駆で想起させるのは「アニー・ホール」や「(500)日のサマー」でしょうか。知的内向というか、スノッブ風味なのも似ている気がするし、恋愛を描きながら批評的でもあり、その先に“人が生きること”が横たわっている。
そう若くはない男女の人生の逡巡が、描かれた佳作であると思います。

…とかなんとか書いてきましたが、この映画の魅力の90%は主人公のヴァンサン・マケーニュさんです!
まさに禿げ散らかしている、としか言いようのない頭髪の下には端正な作りの顔面があって(スタンリー・トゥッチを優男にした感じ)、首から下は見事な30代の肉体。おれと同じお腹だ。
昨年公開された「やさしい人」の時は気付かなかったのですが、本作で僕は気付きました。

マケーニュ、可愛い!

なんでもフランス本国では“イケてるメンズ”ということで人気がある俳優さんのようですが、この髪型と優しげでボンヤリした表情が、母性をくすぐる感じなのでしょうか。いや僕は男ですけど、わかる気がします。甲斐性がない感じがタマリマセン。着ているTシャツも可愛いし。
マケーニュが淡々と喋っているだけで、妙な多幸感が生まれて「ずっと観ていても飽きない」となります。なんですかね、この魅力は。禿げ散らかしているのに。雨に濡れた子犬のような、いじらしさ。
同じハゲ界のいい男、ジェイソン・ステイサム(雄フェロモンむんむん)と全く逆のベクトルに位置する男ですね、ヴァンサン・マケーニュは。

それこそ年に1本は公開されるステイサム映画のように、年1でマケーニュ映画が公開されるといいと思います。
ヴァンサン・マケーニュ、日本でも人気が出る気がするんだよなぁ。