アイスフォール。ウエスタンクーム。サウスコル。ヌプツェ7861m。ローツェ8516m。そしてエベレスト8848m。ローツェでさえ、あんなに低く見えるのか…。南西壁・冬季・単独・無酸素・初登頂。ヤクの荷揚げ。タルチョ。風。黒い鳥。イエローバンド。ナムチェバザール。
あー!こんなにもヒマラヤのすべてが揃っているのに、山歩きが好きな私の眼から、なぜ涙が出ないんやろ。わたしの心から共鳴する何かがなくなってしまったのかな?
22歳になる頃。私はヒマラヤのある山を登っていた。私の到達点は7400m。あらためて想い知らされた。エベレストはものが違いすぎる。私が立った山とは、全てが圧倒的に違いすぎる。だから涙が出ないのか。
いや、違う。共感の涙が出てこなかった理由は、ほんとはわかっている。それは、レビューに書いて読んでもらうのではなく、直にあなたと語り合うべきことだと思う。
イギリスの登山家、マロリーの言葉が鍵となって、劇中に出てました。
"Why did you want to climb Mount Everest?"
"Because it's there."
あなたは何故山に登るのか。
あなたは何故歩くのか。
あなたは何故生きるのか。
あなたは何故、愛するのか。
あなたは何故山に登るのか。
劇中、主人公を演じた阿部ちゃんが答える。
俺がここにいるからだ!
でも、私は違う。
"Because it's there."
最後にもう一つ。映画のストーリーにこだわるなら、谷口ジローさん作画の漫画版の「神々の山嶺」を読んでから、この作品を見た方が良いかも知れませんよ!
邦画度100%の映画です。