まぐ

アルジャーノンに花束をのまぐのレビュー・感想・評価

アルジャーノンに花束を(2006年製作の映画)
3.8
「知る、ということは不可逆である」という時々考えるテーマがあります。
例えば一度ものすごく美味しいビールを飲んだとしたら、他のビールを飲んだときに物足りなく感じてしまうけど、美味しいビールを飲まなかったことにはできません。
映画を沢山見ている人は、出来の悪い少女漫画原作映画を素直に楽しめなくなります。
一番好きな映画、「ジョゼと虎と魚たち」は、今まで外界を知らなかった少女が恋をしたからこそラストの喪失感が生まれます。
このように、知らない人はある意味知っている人に比べて、辛い事が多いんじゃないかなと。しかも、一度知ってしまうと戻れなくなる分、知らないという時間は貴重なのではないかと。


この映画を見ると、そのテーマが頭に浮かびました。シャルルは知能が高くなったからこそ色んなものを知ります。悪口を言われていた事、恋をはじめとする様々な感情、元の自分がいかに知能が低かったか。
また、頭が良くなるにつれて周りを見下し始めたときは、憂鬱になるのと同時に少し共感も覚えました。純粋だからこそ、悪意なく正直な物差しで人をはかってしまい、孤立していく様は哀れ。

ジョゼ虎は前向きな終わり方だったのに対してこちらは極めて後ろ向きでした。薬を使い知能をあげたことに対してか、人を見下すようになったことに対してか、またはその両方に対する罰が下ったように見え、寓話的な話だなと思いました。
にしても知能障害を持っているが故に幼い頃に母に捨てられ、人のうまい愛し方を知らないシャルルがさらに孤独になるラストはあまりに不遇すぎませんか…


原作はどうやら仕組みが面白いらしいので、ぜひ読んでみたくなりました。
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