360度荒野ですと告げる冒頭から、寂寞たる雰囲気。
予備知識なく観ていたので展開を予想できなかったのだが、主人公は「閉塞をやり過ごすに長け、共喰いや共倒れの一線だけは死守するホスピタリティ豊かな人々」の保護を受けつつ、強圧に流され自滅へと歩を進めていく。
暴力に溢れた作品でもある。
男たちは内に潜む野蛮を酒で紛らわせ、カンガルーをいたずらに撃ち殺す。
中には好き好み自虐に浸るキャラクターも登場、物語に深みを与えていた。
汗まみれで、時に蠅にたかられながらカメラの前に立ち続ける俳優陣の献身も、圧巻。
何だか近い将来の中国、そしてもしかすると日本地方都市の光景を幻視させるような、普遍的な告発力に満ちていた。
どことなくゲイ要素が漂う作品でもある。
主人公がフルヌードを披露するほか、明らかにヤブ医師と一夜の関係を結んだと感じさせるシークエンスあり。