岡田拓朗

きみはいい子の岡田拓朗のレビュー・感想・評価

きみはいい子(2014年製作の映画)
4.5
やっと鑑賞できた。
2〜3回泣きました。

テーマはとても重い。
虐待、学級崩壊、いじめ、認知症、身体障害、モンスターペアレント。
普通であればそれぞれが1つのストーリーとして描かれるくらいたくさんの重たいテーマが並んでいる。
それでも内容は本当に優しい。

かつて虐待にあいながら育てられたことで、育て方がわからずに、つい虐待を繰り返してしまう雅美(尾野真千子)。
我が子を抱きしめることも、頭を撫でてあげることもできない。

小学校教師として、自身の優柔不断な性格柄、ダメなことをダメと言えずに、大切なことをどう教えるかわからずに、子供に舐められてしまい、学級崩壊寸前にまでなってしまう岡野先生(高良健吾)。
何とかクラスをよくしたいと思うものの、なかなかうまくいかない。

昔の嫌な思い出がよみがえり、ずっと一人で、なかなか前を向いて生きていくことができないあきこ(喜多道枝)。

それぞれの苦労や葛藤が並んでくる前半。
後半に進んでいくにつれて、それぞれに救いの手が伸びていく。

岡野先生は、母親の薫(内田慈)から子供への向き合い方を学ぶ。
子供に優しくすることで、子供も人に優しくすることができる。
優しさが伝播する。
そんな薫の言葉が印象に残った。
母親って本当に偉大で、子供を育てることの尊さを改めて感じた。

これを機に、だんだんと岡野先生が生徒に丁寧に向き合っていくようになる。
優しさや温かさ、愛を生徒に感じてもらおうと出す宿題は素敵だった。

雅美は、同じく子供の頃に虐待をあっていたけど、優しく上手に子育てをしてる陽子(池脇千鶴)に、抱きしめられることで、自分の子育ての誤ちにしっかりと気づき、子供と丁寧に向き合う決意を固める。
虐待という辛い経験の対峙としてあげられていた周りからの優しさは、「べっぴんさん」と言ってくれていたことだけ。
それだけでも人は救われるし、その記憶を忘れずに、人に優しくできる。

あきこは、身体障がい者の子供と触れ合うことで、徐々に人生を前向きに生きれるようになっていき、その話を聞いた子供の母和美(富田靖子)は、自分の子供の優しさや存在意義に気づき、涙する。

重いテーマの中に、ストーリーが進むにつれ、だんだんとそれぞれに光が見えてくる。
みんな生きていく中で、しんどいことやどうしたらいいかわからないことだらけで・・・
でも味方になってくれる人が、必ず側にいてくれるわけではない。
そんなときに、忘れかけてしまう優しさや愛や温かさに触れることができたとき、心が変わる、そして行動が変わっていく。

しかもそういうのは、どんな人も気づかせてあげることができる、それでもなかなか日常の生活の中では、考え得ない大切なこと。
優しさや温かさを持っている人は、周りにその大切なことを気づかせてあげられる。

そこのみにて光輝くと同様、呉美保監督はどんな人にもしっかりと救いの手を差し伸べてくれる。
光を差し込んでくれる。

どうしようもないことなんてなくて、誰もが優しさや愛に触れるとき、温かい気持ちになれる。
みんな根っこはいい子。

大人も子供も抱きしめられたい。
抱きしめられることで人は愛や温かさを知り、それを他の人にも与えたいと、優しくなれる。
素敵なことに気づかせてくれた映画。大切にしたい。
岡田拓朗

岡田拓朗