きよみず

きみはいい子のきよみずのレビュー・感想・評価

きみはいい子(2014年製作の映画)
4.3
#172-2015/6/30
呉美保監督の前作「そこのみにて光輝く」は正直はまらなかったんだけど、今回は毎日のように目にする小樽が舞台ということで半ば義務感というものを背負いながら見てきた。

ウィングベイや観覧車、いつも目にしているあの風景ではあるけれど、海を見渡される公園をはじめ、まだまだ知らない一面があるんだなあ。

実に素晴らしい映画だった。大人も褒めてもらいたい、抱きしめてもらいたい。たしかにその通りだと思う。でも子供、大人関係なく人間の自然な感情なんだよね。そこには年とかの区別なんていらないのかもしれないし、いくら年を重ねても子供の部分は残っていくんじゃないかな。

物語は子供を虐待している母親尾野真千子、なんだかぱっとしなく頼りない新任教師高良健吾、少しボケてきたおばあちゃん喜多道枝の3つのエピソードからなる。

人物の描き方、関係性、丁寧に丁寧に描かれる。どのエピソードもじわりじわり感情が積み重なっていき、後半心の内側からどっと溢れかえる。
このエピソードの中で特にお気に入りは高良健吾の教師の話。よくいそうな、なよっとした感じの若者を演じており1度目の前の生徒から逃げてしまう彼、しかし彼の中でもゆっくり、同時に激しく何かが変わったんでしょうね。最後の変化なんかは、光の入り方なんかも含めて大好きなシーン。

あの急な小樽の坂を走った高良健吾、ナイスラン。
そこのみにて光輝くからは全く想像できない高橋和也、等身大の子供達、子供を虐待して自分も心に傷を負っていく尾野真千子、どの役者さんも素晴らしかったが、池脇千鶴は日本の宝だと再認識した。
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