445

きみはいい子の445のネタバレレビュー・内容・結末

きみはいい子(2014年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

『そこのみにて光輝く』の呉美保監督作品。全体として一本筋の通ったストーリーがあるというよりは群像劇なのでこのタイプの映画が苦手な人には多少お話にまとまりがないと感じられるかもしれません。明確な起承転結があるわけではなくラストも曖昧な感じで終わっています。

とにかく何が素晴らしいって、実力派の俳優陣しか出ていないことです。尾野真千子、高良健吾、池脇千鶴、高橋和也…この方達が出演されている作品で面白くないもののほうが少ない。尾野真千子さんは何か問題を抱える母親役を演じられることが多いですがとても上手いです。

呉美保監督の『そこのみにて光輝く』は個人的に大好きな作品で、私の中の邦画ベスト5に入っているのですが、その作品と比べてしまうとやはり今作では途中まで登場人物達の辛い日常が淡々と描かれるだけなのでストーリー展開のない冗長な感じが否めませんでした。

ただ、2時間あるなかで残り20分から号泣シーンに突入して最後まで涙が止まりませんでした。映画の中盤で高良健吾演じる小学校の先生が仕事で悩んで疲れきっている時に小さい甥っ子からハグされて頑張れと励まされるシーンで、姉(甥っ子の母親)から、「私がこの子に優しくしたらこの子はそれを他の人にするようになった。母親の仕事ってすごいことだと思わない?」と母性愛から人類愛へと繋がるようなことを言われてハッとするのもよかったですが、残り20分はそれ以上に具体的に親から虐待を受けてきた人達の心の叫びだったので胸に迫るものがありました。

人間同士がお互いを理解することは難しいかもしれないけれど、この世界で誰かたった一人でも自分のことを気にかけてくれる人がいたら人はそれだけで希望を持って生きていけるのではないでしょうか。それは家族のように血の繋がった間柄でなくても充分成立しますし、自分が誰かを気にかけることだってできる。そんな希望を持たせてくれる映画の終わり方でした。
445

445