調伏系V魔虚羅

ニンフォマニアック Vol.2の調伏系V魔虚羅のレビュー・感想・評価

ニンフォマニアック Vol.2(2013年製作の映画)
4.2
愛の代償としてオーガズムを失った女、だが其れに反発し止めどなく溢れ出す淫らな欲望。それは紛うことなき性的倒錯、愛からの逸脱。貪欲にも自らの限り無い性欲を満たそうとするあまり、堕ちるとこまで堕ちていく。美しく、それでいて非情で残酷な現実の姿を捉えた人生回顧録。
差別とかそういう偏見とか無しに君の話を聞くよ、私は童貞だ。純粋無垢なのだよと言っていたセリグマン。最終章まで話を聞いていてくれたにも関わらず、ジョーのことを他の人と何ら変わらない偏見と差別の意味を込めて、「大勢の男とやったくせに」と吐き捨てる様に言います。やはり、差別や偏見といった問題は、歴史とかセクシュアリティに関連性の無い専門知識から見たりして論理的に語り合ったとて、そう簡単に消えるものでは無いのだなと痛感させられます。
言葉が禁止される度、民主主義の基礎が崩れる。社会は言葉を取り除くことでその無能さを露呈させる。社会が求めてる政治的な正しさはマイノリティへの民主主義的な配慮だ。社会はそこに生きる人々と同じく臆病で、人間は民主主義には愚かすぎる。
人間の特質とは、”偽善“である。正しいことを言う悪人を称賛し、間違ったことを言う善人を嘲笑う。言論統制に関しても寛容で、否定ではなくとことん受け入れるトリアーの考えが現れている会話シーンが印象に残る。
雪が舞い散る窓際に子供、そのシーンに流れるはゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルの歌劇リナルドより「私を泣かせてください」。あの演出には、監督の過去作を観ている人間なら誰しもが「マジかよ…」となるほどに唸る演出。Vol.2の本作の方が前作よりオチ含めてトリアーらしいものになっていたと感じる。
調伏系V魔虚羅

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