茶一郎

パシフィック・リム アップライジングの茶一郎のレビュー・感想・評価

3.4
 全世界の大きな男の子の皆さん、お待ちかね。
 怪獣そして巨大ロボットモノをハリウッドのビッグバジェットで、しかも今やアメリカ映画界のトップに到達している「メキシコのオタク番長」=ギレルモ・デル・トロ監督が映像化した破格の一作『パシフィック・リム』の続編『パシフィック・リム アップライジング』、ついに日本着陸です。

 本作の監督は、『シャイプ・オブ・ウォーター』でアカデミー作品賞を獲得したギレルモ・デル・トロから、ドラマ版『スパルタカス』やNetflixオリジナルドラマ『デアデビル』を出掛けているスティーヴン・S・デナイトに変更。『スターウォーズ』のJ・J・エイブラムスから始まり、『アベンジャーズ』のジョス・ウィドンや、その続編の監督を担当しているルッソ兄弟など、最近、映画がドラマ化している時代においてドラマ界から映画界への流入は当たり前になっていますが、どうしても本作監督のスティーヴン・S・デナイトの手腕には疑問が。そしてそれ以上に、「ギレルモ・デル・トロ監督の不在」がこれ程までに映画全体のイマジネーションに影響を及ぼすという事を再確認させられました。

 さて『パシフィック・リム アップライジング』、本作ではついにカイジューに最も破壊された町でお馴染み、我らのトーキョーが登場する記念すべき作品。しかしどういう事か本作の物語は、ジョン・ボイエガ扮する主人公(しかも前作のスタッカーの息子という設定)が住むカイジューに破壊されスラムとかした無法地帯から始まります。それこそ、ジョン・ボイエガの出世作である『アタック・ザ・ブロック』の主人公役の設定を引き継ぐかのような。
 そしてあれやこれやとイェーガーの新米パイロットの訓練シークエンスを雑に語って、ロボットVSロボットと、中々、トーキョーもカイジューも出てこないという冗長なストーリーが長く続いたという印象を受けました。
 特に前作の不満点としてイェーガーのパイロットの訓練シーンが、ほとんど無いというものがありました。そこで本作において訓練シーンを見せるチャンスだったのですが、ここで主人公がすでに訓練済であるという設定が邪魔をする。いっその事、主人公がスタッカーの息子でもなく、ただのスラム街育ちの悪ガキで、その悪ガキがイェーガーのパイロットとして素質を見せていく成長譚で良かったのでは無いかと思ってしまいます。

 しかし、中盤までの退屈さを吹き飛ばすのは、出ました!トーキョーでの怪獣ロボットバトル!皆さんがおっしゃる通り、「エヴァンゲリオン VS ゴジラ」といた様相で非常にテンションが上がるものでした。前作では暗かったバトルシーンも、本作では快晴なので問題なし。映像技術の発展を感じさせる、とにかく圧巻で、素晴らしいものでした。
 
 前作後の荒廃した世界観も、その荒廃した世界をたくましく生きる主人公の造形も、新兵モノの設定も、全てが噛み合わない何とも「もったいない」作品。とは言うものの、少年の心をお持ちの皆様は日本を舞台にしてくれた感謝の気持ちを伝えるべく、劇場に向かって下さい。
茶一郎

茶一郎