七沖

パシフィック・リム アップライジングの七沖のネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

〝戦いは〔新世代〕へ〟
個人的には全然あり。前作の不満点を、分かりやすく改善してきた。その反面、手を抜いて欲しくないところで手を抜いてしまった印象のある作品。とにかく尺が足りていない。

世界に平和が訪れて10年。怪獣は過去のものとなりイェーガーパイロット候補生たちにとって実戦経験のない日々が続くかに思われたが、突如正体不明の黒いイェーガーが現れて…というストーリー。

前作で不満だった視界不良のなかでのバトルから一転、昼間のアクションが多くて単純に観やすかった。イェーガー対イェーガーはかなり白熱し、アラスカでの戦いはかっこよさを追求した構図が多くて盛り上がる。

反面、キャラの掘り下げが嘘みたいに足りていなかった。イェーガーパイロット候補生たちはヒロインのアマーラ以外はほとんどエピソードがなく誰にも感情移入できない。せっかく出演している真剣佑も目立たずモブに近かった。さらに言うと、誰がどのイェーガーに乗っているかも分かりづらい。キャラに愛着がないので、人物の識別ができないのは辛かった。

かと言ってメインキャラのドラマが充実しているかと言うとそんなこともなく…主人公ジェイクの「父親とは違う」発言は何も回収されていない気がする。父とは違う道を歩むのか、父の偉大さを認めて同じ道を行くのか、ハッキリさせて欲しかった。
そして、アマーラがトラウマを解消できていないのに、ラストバトルに向かう際はちゃっかりイェーガーに乗れているのはかなり違和感があった。
どうせなら足手まといだけど念のための補欠要員としてコクピットの隅っこに同乗→他のパイロットが戦いでみな脱落→ジェイクの下へジャンプする例のシーンでトラウマを乗り越えてパイロットとして覚醒…という感じの少年マンガ的な熱さが欲しかった。
アマーラを演じたケイリー・スピーニーは新人ながら演技も良かったので、これからの活躍が楽しみだ。

最終決戦の地は日本だが、日本人から見たら「ここどこ?」となること請け合い。少なくともお台場ではない。

怪獣対イェーガーの集団戦は、よくぞ映像化してくれたと思える素晴らしいバトルシーンになっていた。巨大怪獣相手にイェーガー4機が立ち向かう様子は劇場版ウルトラマンを彷彿とさせる。イェーガーごとの特性を活かしたバトルは、まさに前作で観たくて観れなかった映像だ。

余談だが、前作のレビューでイェーガーをヘリで吊るして移動する点について書いたが、本作では遂に自力で飛行するほど進化する。そういった点含めて、キャッチコピー通り〔新世代〕の話なのだと思う。リアルロボットからスーパーロボットになってしまった感じがしてなんだか寂しい…。

続編として満点解答ではないが、劇場で観る価値のある迫力は十分にある。次回作にも期待したい。
七沖

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