エクストリームマン

パシフィック・リム アップライジングのエクストリームマンのレビュー・感想・評価

3.2
But I ain't my father.

※ネタバレしてます。

なんというか、思い返してみると全体的に不透明感ともやもやが凄い。面白いところ、アガるところもあったのだけど。敢えて気になったところだけ書いておく。

まず、主人公のジェイク・ペントコスト(ジョン・ボイエガ)が「英雄」の父親に引け目を感じてPPDC(環太平洋防衛軍)から遁走したまではいいけど、そこから盗品売って暮らすようになった経緯が結局よくわからない。普通に他の仕事に就けばよくない?世界が荒廃してるから普通の仕事がないってことなのか?復興需要とか半端ないくらいありそうだけど。怪獣に破壊された地区だけがそうなってるの?そうだとしても、そこにわざわざ住んでるのには、それなりの理由があってよさそうだけど、「悪ぶってみた」以上の理由が見えないよなー。自分の義姉:森マコ(菊地凛子)に権力使った尻拭いさせてるし。ネイト・ランバート(スコット・イーストウッド)との確執?にしても、台詞の上ではそれらしいこと言ってるけど、特にコンフリクトがある/あったようには見えなくて、劇中でも2人がなんらかの方針の違いでぶつかってる描写もなく、更に教官らしいことをしている場面も皆無(演説くらい?)。

同様に、アマーラ・ナマーニ(ケイリー・スピーニー)が危険区域で独自のイェーガー作ってたことと、逮捕後PPDCに入れられた後の行動原理が一致していなくて、なんだかなーと。怪獣がまた来るに違いないから自分でイェーガーを作って対抗しなければならない、という考えは、結果的に正しかったとしても、映画冒頭時点ではパラノイアでしかなく、そんな考えのやつが軍事組織に入って即馴染めてるのには違和感がある。アマーラに限らず、訓練生が訓練してる場面がないのとか、結果的にイェーガーに乗る経緯の場当たり的というか、意思決定プロセスの不透明さ加減が凄いし、最後まで画面に出る度に「誰なの?」ってくらい観客に彼らを馴染ませる気がないところが凄いよね。10年平和だった世界で何故入隊したのかとか、ネイトと彼らの関係性とか、一瞬でもいいからそれらがわかる場面入れておいてほしかった。

全体的にタメがないのも気になったな。なんか、気がついてたら死んでました、みたいな場面のオンパレード。流石にシドニーでヘリ落ちるところはそれらしい演出入ってたけど、インド系のパイロット死ぬところとか、司令官死ぬところのタメのなさはなかなかのもの。そりゃ実際にはそういうものかもしれないけど、そんな「リアル」は、こういう映画ではクソくらえでしかないわけで。怪獣とイェーガーの戦闘にしても、理屈とか駆け引きが特になくて、切ってみたら切れた、殴ってみたら殴れた、逆になんか尻尾で/腕で/顎で吹き飛ばされた、みたいなことの繰り返しでしかなく、アイディアで逆転に繋げられそうな新兵器(グラビティ・スリング)をクライマックスでビル倒すことにしか使わないところも、あまりにも勿体ない。一度も試験してないジェットエンジンでイェーガー飛ばす作戦も、飛び立つところと降り立つところくらいしか映ってなくて、もうちょっと不安要素だったり、あわや失敗、みたいなことがあってもいいのになと。それだけ安定して特に何も起こらないなら、逆に確立された技術として出せばよかったのでは。

東京感のない東京(メガ東京だからなのか?)とか、火口がグツグツ煮えたぎっている富士山(未来だからなのか?)とか、そういうところは最早どうでもいいから、キャラクターの行動原理とか演出とかを普通にしてほしい。イェーガーと怪獣のデザインもこの際問わない。

まぁ、上記のような諸々が、昭和ロボットアニメのオマージュなのだと言われれば、全ての矛盾が解消するので、結果的にはそれで押し通せばいい気もする。