motoietchika

パシフィック・リム アップライジングのmotoietchikaのレビュー・感想・評価

3.8
デルトロ監督の第一作とはだいぶ趣が違っていたが、これはこれでおもしろかった。

新要素としては小型イェーガー"スクラッパー"がむちゃくちゃ可愛い。身体を丸めて転がることで、他のイェーガーにはない機敏で意外性のある動きができる。
……なのに! こいつの動きを見せる場面はしかしほとんど冒頭だけで、ラストではあまり強い必然性を感じられない再登場。

そういう部分にシナリオの弱さをひしひしと感じる。
設定の弱さももちろんあるが、そんなものは破綻していようが割とどうでもいい。富士山が東京のなかにあっても構わないし、前作から10年の間にもうちょっと基地をたくさん置いてもっと強化できんかったんか? とか。そういう「正しさ」はこの作品には求めなくていい要素だ。
もちろん無駄な引っかかりがないに越したことはない。
私が言いたいのは、本当に描くべきもののために多少他が疎かになるのは構わないということだ。

で、その本当に描くべきものっていうのは基本的には巨大ロボが重い体躯を動かして敵を倒す! という快感が中心にあると思いますが、まあ正直そこも微妙でした。
アクションは冒頭のスクラッパーの顔見せシーンから中盤までの、基本的に「1対1」の戦闘シーンが良かった。ロシアでの氷上のバトルはかっこよかった。
しかし、複数のイェーガーが同時に敵と戦う場面は本当にひどかった。連携がうまく取れずに相手に翻弄される、という場面がひたすら続いて、「あ~このあとチームワークを取り戻してうまく倒すのかな」と思っていたらそのまま多対多の場面が終わってしまった。
結局最後までチームプレーは発揮されておらず、だからこそ仲間がやられてしまうことの重みも小さい。

批判ばっかりになってしまったので、個人的に好きだったことをもうちょっと羅列すると、
展開がぶっ飛んでるところ、特に終盤。でもぶっちゃけあれは前作と変わって中国資本になったがための強引さも由来していると思われる。中国メーカーの女性社長があそこで活躍する必然性なんやねん! そこよりもまだロシア人のイェーガー操縦者のほうを活躍させたほうがええやろがい! って思うんですが、その一方では「中国のメーカーはバックドアを仕込んでいる」っていう先入観(もちろんそういう事実も過去にあったわけですが、なにも中国に限った話ではない)を展開の主要な部分に使っていて、そういうのはいいのかよ。とか。
最終決戦のあれは思いっきり『カンフーハッスル』ではないか、とか……。

色々と楽しい映画だったと思います。
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