オレンチ

パシフィック・リム アップライジングのオレンチのネタバレレビュー・内容・結末

2.5

このレビューはネタバレを含みます

【パシフィック・リム:アップライジング】

『前作の精神を保ちたかったんだ。』
──スティーヴン・S・デナイト。


世界中の、特に日本の男子たちを熱狂させたあの『パシフィック・リム』の続編がついに!って感じですよね〜。
第一報はメイルストロームでしたよね。
そこから監督はデル・トロじゃないとか聞いたりしてかなり不安になったりとか、色々ありましたが、第一報からボツになることが多い昨今にしては、思ったよりもかなり早く劇場公開まで進めた作品なんじゃないでしょうか?(ボツになることが多いというより、ネットが進んだ現代、それまで降りてこなかった情報が下々まで降りてきやすくなったってのが正解なんですが)

言わずもがな僕もまさに熱狂した男子の一人なわけですから、いろんな想いはあれど、やっぱりスゲー楽しみな作品なわけですよ。

主演は最近ノッてるジョン・ボイエガですね。
おそらく「アタック・ザ・ブロック」をみてからの起用でしょう。
アンダーグラウンドに生きる様がとてもマッチしてましたね。

というわけで、
字幕2Dを1回、日本語吹替2Dを1回、デナイト監督によるオーディオコメンタリーを1回、各種特典、あと一応ですが、前作のギレルモ・デル・トロによるオーディオコメンタリーを1回、各種特典をそれぞれ予習してみました。
余談ですがデル・トロのコメンタリー、クッソ面白いです。「パシリム」のコメンタリーなのに、「ゴジラ」の解説を数分に渡ってしてくれたりしますからね笑
機会があれば是非オススメします。



ではさっそく──冒頭で述べたようにデナイト監督は前作の精神を保つことができたのか!?
あくまでも僕的にどう感じたかですが…

「リスペクトは感じるが、スピリットは感じない」

ですね。

ただし前作には二つの精神が込められていると考えていまして、その片方はギリギリ保てていたんじゃないかなと思います。
その片方というのは、"国境の、人種の壁"ですね。
前作ではデル・トロ自身が言っていたことですが、無意味な壁を作ろうとする政治家を揶揄し、人種の壁なく団結して困難に立ち向かう作品を描きたかったと言っていました。
本作でも色んな国籍の訓練生達が地球を救うために団結していますね。
デナイト監督もこの精神に大変共感し、意図的に本作にも盛り込んだと語っていました。
なぜギリギリかと言うと、今作からはあまりポリティカルなメッセージを感じなかったからです。
問題提起というより、それが解決し、当たり前になった先って感じでしたね。
それが正解といえば正解なんですが。



じゃあもう一つの精神は何かというと、むしろそれがメインであり、世界中の男子が熱狂した確たる部分だと思うのですが、
それは、“特撮感”ですね。

ある批評家が前作のことをこう言っています。(名前忘れた)

「この作品は地獄のような世界を、実在主義の皮肉な視点で描いたSFではない。」
「どちらかというと詩の世界だ。」
「怪獣とメカに対する愛の詩だ。」
「怪獣映画やメカ映画への、尊敬を示そうとしている。」
「それを見事に成功させた。」
「この作品が嫌いな人は、予想を裏切られただけだ。」
「素直に受け入れればきっと楽しめる。」

デル・トロ自身、この批評を「まさに僕が伝えたかったことだ!」と喜んでいたし、僕も至極的を得ていると思います。
ここでいう怪獣映画とは、円谷プロが作りだしてきた怪獣映画のことで、こういった特撮映画に対するリスペクトを表現した作品なんですね。


では僕の思う特撮的とは何か。前作と比較しながら進めていこうかと思います。

まずはストーリーですね。
前作は”ロボットVS怪獣”にとにかく熱狂してもらいたい!という想いで、ストーリーは出来る限りシンプルなものになっていました。
それに対して本作はというと、サスペンスな要素が色濃く含まれていたり、登場人物の風呂敷もだいぶ広くなってしまい、結局どれも中途半端になってしまっていたんだと思うんですよね。
本シリーズにはサスペンス的な要素はほぼいらなんだと思います。
「ダイ・ハード」に対する「ダイ・ハード2」そっくりそのまま流れを継承したようなドシンプルな作りでよかったんじゃないかなと。

また特撮においてこれこそ重要なことだと思うのですが、”人が入っている感”ですね。
前作も無理があるんじゃないかといわれるとなかなか苦しかったりもするのですが、今作と比較するとやっぱり違いは歴然ですね。
前作は60年代でも撮影できるようなアクションを目指して作られており、前述した怪獣映画に対するリスペクトを最も感じられるところではないでしょうか?
そのリスペクト感こそが前作多くの怪獣映画ファンを熱狂させた理由であり、本作できびきび動くイェーガーに嫌悪感を抱く人が多い理由なのだと思います。

かく言う僕もきびきび動くイェーガーは受け入れ難く、悪い意味でハリウッド的になったなぁと感じました。
アクロバットに動くロボットが嫌とか、CG感丸出しが嫌とかそういうわけではなく、なぜ前作がカルト化したのか、その精神を保つとはどういうことかというのを鑑みたとき、これは違うんじゃないかなと感じました。
今回みたいなアクロバットに動くロボットは「トランスフォーマー」シリーズでやればいいんじゃないですかね。

そもそも身も蓋もないことを言うと、
今回のイェーガー自体、僕の好みじゃないってのも否めないです。。
あ、ただ3人乗りのタレットだけは最高に興奮しました。
タレットまで移動するギミックとかめっちゃカッコいいし、後ろそうやって撃つんだ!みたいな笑

そもそもデナイト監督は進化したイェーガーを見せたいと10年後の設定を選びましたが、10年後だと進歩しすぎですね笑
特撮の怪獣映画からハイスピードのロボットアニメへ変わってしまった感じがします。
仮に進化したイェーガーを許容するとしても、前作見たく出動までのシークエンスは一度でいいので事細かく描写するべきだったんじゃないかなと思います。

まあ~あとは、イェーガーのスケール感を表すのにデル・トロは細かいことをやってたり、そもそもギミックの細かさですよね。
パンチひとつ繰り出すにしても早戻しして見てみると非常に細かいところまでギミックしてるんですよね。
まぁこれに関しては長編初監督のデナイト監督とこだわりが人一倍強いギレルモ・デル・トロ監督を比較してしまうのはあまりにも気の毒かなとも思います。


なかなか辛い感じになってしまいましたが、もし続編がやってくれるのだとしたら結局は楽しみに待ってしまうシリーズではあります。

最後まで長文・乱文にお付き合い頂きありがとうございました。