たく

マイ・インターンのたくのレビュー・感想・評価

マイ・インターン(2015年製作の映画)
4.0
仕事にやりがいを感じない毎日を生きて行くことは、そんなに容易くない。頑張ろうと思い1日に向かっても、昼間の現実を前に1日の終わりは徒労感に支配され、朝の目覚めはとても憂鬱な気分になる。そして、これじゃダメだと、気分を何とかして盛り上げようとする。その繰り返しだ。

この映画の70歳の主人公、ベンの朝の目覚めはそれとは対照的だ。
夏休みの朝のこどものように、朝になるのが待ちきれない様子でベッドから飛び出す。妻に先立たれ、仕事も無くなった寂しく、退屈な日々を知るからこそ、新しいアルバイトを得てからの朝があそこまで爽やかなんだろう。
クローゼットから、現役時代のシャツとネクタイを選び、スーツに袖を通す姿が、なんとも無邪気で嬉しそうなことか…。
綺麗にアイロンをかけたハンカチを忘れない。「自分は使わずに、女性が泣いた時のためにハンカチはある」らしい。笑

僕たちは、繰り返される“退屈”な毎日の中でつい見失ってしまう。
仕事があることがありがたいという気持ち。
ベンは仕事を選ばない。
社会の中で人と繋がれる、そのことがどれだけ有難いことなのかを知ったから。
若いカオスなエネルギーに囲まれる中で、謙虚に、喜びの笑みを浮かべながら佇む初老の姿は、どこまでも格好いい。
たく

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