しんご

マイ・インターンのしんごのレビュー・感想・評価

マイ・インターン(2015年製作の映画)
3.9
「ゴッドファーザーPARTⅡ」(74)と「レイジング・ブル」(80)で2度のアカデミー賞に輝く名優ロバート・デ・ニーロと「レ・ミゼラブル」(12)で初オスカー獲得のアン・ハサウェイ。そんな2大スターの演技合戦にも注目が集まった本作だが、蓋を開けばデ・ニーロの余裕の貫禄にひたすら惚れ惚れする120分間だった。

マフィア、殺人鬼、強盗団リーダー、刑事、CIA局員、 賞金稼ぎ、弁護士、神父、軍人、ボクサー、タクシー運転手、コメディアン...驚異的な役のレパートリーを誇るデ・ニーロが今回演じるのは70歳を過ぎてネットアパレルショップの研修社員となったベン。高齢者雇用をすることで社のイメージアップを図る政策の一貫として入社した彼に対しては社長ジュールスを始め誰も何も期待をしていない。型通りの面接マニュアルに従って「10年後の自分はどうなっていますか?」と聞かれ困惑する70歳のベンにつられ思わずこちらも苦笑が漏れる。

そんな「新人」が机上の返品の山を片付けジュールスに感謝されるシーンから怒濤のデ・ニーロ無双が炸裂。異性に謝る際は会ってしっかりと誠実に振る舞うことの大切さを若手に教え、家がない別の社員に自宅の一部を提供する懐の広さを見せる。素晴らしいのがベンの諭し方がとても優しく含蓄があること。「人生の先輩の俺が言うんだから間違いない!」みたいな傲慢さは一切なく、ただひたすらにジェントル。しかし、彼の経験則から醸し出される知性と教養は隠しても隠し切れない。前に出ず優しく人生を説くベンに登場人物のみならず私もいつしか虜に。「ヴィンテージは廃れない」とベンが自分の鞄への愛着を語るシーンがあるが、あの鞄はベンひいてはデ・ニーロそのものを象徴しているように感じられる。

そうした中で展開されるアン・ハサウェイ扮するジュールスとの交流においても粋な好々爺デ・ニーロの格好よさが爆発。ホテルで有料のお菓子を食べながら2人が喋るシーンは和むし、彼女の息子に「緑色のモノは?」ってクイズを出すベンの優しさに胸が切なくなる。

「老害」と呼称され何かと高齢者が敵対視されることが多い世の中だけに「年の取り方」について考えさせられ、かつ胸がほっこりする佳作。あと、ハンカチは常に携行しようと心に決めた。
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