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友だちの恋人のcyphのレビュー・感想・評価

友だちの恋人(1987年製作の映画)
4.8
4年ぶり3度目にしてやっと良さがわかった、劇薬みたいな面白さとは違うけどこんなによかったか…涙 となりました ブロンシュとレアっていうそれぞれに魅力的なふたりが軽やかに友だちになっていく過程もいいし、ふたりきりでは全く対等なふたりが恋愛というバトルフィールドに立った途端戦闘力53万と5になっちゃうかんじもほどよくリアルで最高 そして本来絶対的に恋愛において主導権を握れない側のブランシュの機嫌で人間模様がちゃんと操縦される様もめちゃくちゃよかった やめて→わたしは嫌がってないわ→キス→寝たけどこれっきりにしましょう→よりを戻したくせに→わたしも同じきもち◎ ぜんぶ花丸だよ…涙

ロメール作品の撮影がすべて少人数スタッフかつワンテイクで行われていたという話を念頭に観ると改めて、街角で会話してるシーンで強風がふたりの髪を揺らした途端風の音が入るところや、ラスト一歩手前の湖のほとりでブロンシュとファビアンが喋るシーンで話向きが明るくなったとたんに日が差してくるやつ、なんか泣けてしまった 都会と田舎というコントラストを徹頭徹尾テーマとしてきた流れも念頭に置くと、郊外ニュータウンという提案もより生き生きと息づいてくる あと単純に舞台として超いい

そしてやっぱり恋愛模様の立体感を倍増させるのがアンビバレンスを口にさせる手腕 「ほかの男を好きというより、ファビアンを裏切りたいという気持ちだけなのかも」「愛してないからよりを戻せたんだ」みんな20代前半でもうこんな台詞を言えてすごい、さすがは恋愛強豪国

関係ないけど2016年秋にひとを愛したい女子会のみんなでこの映画観に行って、cocon烏丸の1階のビストロで感想戦してるとき「フランスに行きたいね〜」ってぽろっと口にしたらそのままひとを愛したい女子会パリ編が開催決定したという心温まるエピソードをつられて思い出した いつかまたそういうノリで旅行に行ける日が来てほしい



2016.9.20 京都シネマ 「ロメールと女たち」特集にて
『緑の光線』と比べるとキャラクターがパキパキ動いて漫画的 さまざまな組み合わせの男女がさまざまに別れたりよりを戻したり振ったり振られたりと忙しいのに誰ひとりとして血を流さず深刻でなくてそれがよかった 涙は流れても血は流れない、自分もそうありたいなと思う

若い女たちの瘦せぎすな身体と鮮やかな服の色、海も木漏れもやっぱりとても綺麗 ブロンシュの住む団地の妙なSF感もよかった

ロメールの映画では拗らせも恋もまったく同一の直線上にあってそれはなんだか朗らかな救済のようだと思う 不意に泣き出しちゃうような感傷も馬鹿げて笑っちゃうようなラブシーンもぜんぶ一緒 人間が生きるってこんな風でしょってのびのびと美しく眩しい陽の下にさらけ出して描いてくれるのはすごくうれしくありがたいことだ

今作の軽薄ハッピーな感じも悪くはないけど『緑の光線』の拗らせ1000%な感じがとりわけ好きだったので そっちを期待しながら他の作品も観ていきたい よい特集上映でした
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