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ある犯罪の物語のryosukeのレビュー・感想・評価

ある犯罪の物語(1901年製作の映画)
3.6
背景の書き割りはかなり雑。扉が開いたら更に書き割りが出てきた時は製作者の意図していないナンセンスさを感じてちょっと笑ってしまった。部屋の壁の模様が変わった瞬間は光の変化、時間経過を表しているということでいいのかな。当時の技術水準とか関係無く普通にもっとリアルにできるはずなので、まあ適当なんだろうけど、映画って「これぐらい」で良かった時代があったんだなあなどと感慨深く思った。まだ芸術でも無ければ入場料も安く、「見世物」だった時代の映画の朗らかな適当さみたいなものを感じる。
ワンカットの中で寝ている男とその男が見ている夢を同時に見せる演劇的な手法も面白い。今なら夢の描写に入る時にカットを割らなくては「リアル」では無いということになるだろうが、そのようなリアリズムに関する規範などまだ存在しないのだなと思う。演劇なら現在もこの手法でも良いのだろうし、芸術形式によって何がリアルかということを決定する約束事に差異が生じることが面白いなと思った。夢の場面が切り替わるたびに幕が降りるのも、まだかなり演劇に引っ張られているなという感じ。
ラストのギロチンの呆気なさは凄みを感じる。首が切断されることは首が切断されることでしかない、という叙情もクソも無い即物的な演出。当然現在ではこんなことは出来ないだろう。ギロチンがスパッと首を切り落とすかのように、一瞬でスパッと終幕する潔さは上映時間の短い初期映画ならではだな。
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