ねこたす

ザ・ウォークのねこたすのレビュー・感想・評価

ザ・ウォーク(2015年製作の映画)
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マン・オン・ワイヤーの感想と合わせて読んでもらえたら幸い。

この映画は、絶対に3Dで見なきゃいけない映画だ。
今、ゼロ・グラビティを2Dで見ようとする人はいないでしょ?(いや、別にディスっているわけではないのだけど…)
体感映画として、2Dになってしまうとこの魅力が半減してしまうだろう。作品で一番印象的な一本の線。それがまるで存在感を持った生き物のように浮かび上がってくる。
そして、高さ。地面までの距離感。3D以外にはありえない。

さて、先にマン・オン・ワイヤーを見ていると、「おっ、あの話かな」「あいつ実行中にもラリってた奴だろ!」みたいな楽しさがあった。なんだか懐かしい人に会った気分。

ちなみに、ドキュメンタリーと劇映画どちらから先に見ても違った楽しみ方が出来て良いのではないだろうか。
「事実に基づく~」とか言ったって、実はファーゴみたいなのでしょー?と思っていると、ドキュメンタリーでそのクレイジーさにびっくりする、そんなのも楽しそう。

ドキュメンタリーの方は、最後の犯罪を多角的にインタビューや写真を交えながら語っていく。その中で、フィリップの生い立ちを垣間見ることができた。
しかし、こちらはあくまで物語っていく。まさしく語り手に扮しながら。

てっきり独学だと思っていたけど、こちらではワイヤーの張り方を学んでいるシーンがある。パパ・ルディなんて人知らなかったよ!!
綱渡りについて親から理解が得られていなかったこともあり、"パパ"として彼を導く。教訓や、敬意の表し方が物語の重要な場面で活きてくるので、上手い位置に配置したといえる。

映像的な楽しさはやはり、こちらの方が圧倒的だ。マン・オン・ワイヤーでも映像はあるが、それは記録映像や再現映像であり、やはり一つの劇映画にはならないようなものだった。
ロープが一本一本減っていくところ。OPの白黒部分は、マン・オン・ワイヤーへのオマージュだろうか。それでも、特色で目立つ一本のヒモ。
タワー屋上で隠れている、という字面があんなに恐ろしい場面だったのかという驚き。
何より、今は無きツインタワーがそこにあるという感動。もちろん作り物なのだが、感慨深いものがある。400mもの高さがある建物の屋上の縁をヒョイヒョイ走り回る、なんと恐ろしい映像だったことか。

https://www.ted.com/talks/philippe_petit_the_journey_across_the_high_wire?language=ja#t-393709

これはTEDでフィリップ・プティが講演している映像なのだが、これを観てやっぱり似てたな~と思えるぐらいジョセフ・ゴードン=レヴィットの役作りはとても素晴らしいものだった。仏訛りの英語、低い声なんてそっくりだ。何より、手品師、大道芸人としての所作。身体の動かし方、振る舞いがその通りなのだ。
本人から直接指導を受けたこともあり、綱渡りも全く違和感を感じない。どこかのインタビューですごい練習していると話していたが、その成果が出たようで良かった。

実際の芸術的犯行については、とくに語ることはないでしょう。百聞は一見に如かずですよ。CGなんだけど、あまりにも絵がキマっていてどこかのアートのようだった。あ、あの写真が動いている!という感動。

さて、マン・オン・ワイヤーの感想で、やはり綱渡っている映像がないのが残念だと書いた。その意味では、この映画はそれを味わうためだけにあるといっても過言ではない。そして、それはとても素晴らしいものだった。

これはあくまで作品の良し悪しとは関係のない話なのだが、彼の見た景色をこう簡単に見てしまってよかったのだろうか。情熱と緻密な調査と練った計画と、気心しれた仲間によって生み出された神の所業とも言える行為。その偉業を考えると、なんだか畏れ多いなあという感情まで出てきた。
ヘリの視点はしょうがないにしても、彼の後頭部の上から見下ろす視点。あれは一体誰の視点なのだろうか。神さま? 確かにそれを模したようなとある生物も登場する。

しかし、彼が大道芸を披露する際円を描きそこを邪魔されたくなかったように、あの綱渡りは誰も侵すことができない自由な聖域であってほしかった、と思ってみたり…。

"永久"という言葉の、儚さ。物が無くなってしまうと、途端に現実感が薄れていく。それでも、改めて人にこの偉業について想ってもらい体感してもらう。そうすることで、もしかしたら"永久"に近づいていくのかもしれない。