面白い。スタッフも優秀だし、役者もいい人たちが揃っている。
でも私はこれを『グラスホッパー』だとは認めない。これはまるっきり別物の作品だ。
伊坂幸太郎の11作目の映像化作品である本作は鈴木、鯨、蝉の3つの視点から物語が紡がれる。
原作に忠実に映像化することも可能であったはずだが、この映画は不要な改変が非常に多い。
もちろん大筋は変わらない。しかし、例えば鯨の人物背景など、原作から読み取ることが出来ない改変が随所にみられる。
にも関わらず、大事な登場人物、台詞をばっさり落としてみたりと抽出するポイントが間違っているとしか思えない。
そうした微妙な改変、省略がもたらした結果としてクライマックスシーンなど原作とはもはや全くの別物になっている。
比与子を演じた菜々緒や語り部3人は原作のイメージに非常に近いだけに残念。
が、面白くないかと言われればそうでもないところが悔しいところで、原作に強い思い入れがなければ2時間のエンターテイメントとして手堅く仕上がっている。
「原作と映画は別物だ」とよく言うが、今作もそう割り切ってみれば全く問題はないであろう。
これは単に私が伊坂幸太郎の大ファンであるというだけの話なのだから。