水無月右京

100歳の華麗なる冒険の水無月右京のレビュー・感想・評価

100歳の華麗なる冒険(2013年製作の映画)
5.0
"人生、事が事を呼ぶものだ。考えたって無駄。なるようにしかならない。"

ゆるーい雰囲気で進行する本作。主人公が100歳の誕生日を迎えます。小さな町では100歳を迎えたことは1大ニュース。地元紙は取材にやってくるし市長も出席する誕生パーティーが計画されています。ですが、そんなことに無関心な主人公。老人ホームから出ていくところから本作は始まります。

本作の構成は、主人公の身の回りにリアルタイムで起こる騒動と主人公の過去の回想を行ったりきたりする感じです。本作を一言で言えば"荒唐無稽"。リアリティーを求めてはいけません。

老人ホームを出た主人公。とりあえず行ける所まで行ってみようとしていたところ、駅でギャングから"この荷物を持っててくれ。絶対に離すんじゃないぞ"と頼まれます。この荷物には5,000万スウェーデンクローネ(ざっくり7億円)入ってました。主人公は乗りたいバスが来たので、荷物を持ったまま乗り込んでしまい、ギャングに追われることになります。様々な騒動が主人公の身の回りで発生するのですが、そんなことはどこ吹く風と主人公は成り行き任せに進んでいき、ロードムービーよろしく主人公の周りに人が増え、しまいには象の"ソーニャ"も一緒に旅をすることになります。そして途中途中に過去の回想が挿入されます。

主人公、伊達に100年生きているわけではありません。主人公の過去を簡単にまとめると、数々の要人達と酒を飲み交わして親交を持ち、国際情勢の節目節目に居合わせて歴史を動かしていた・・・(本人無自覚)というものです。1回目に見たとき、ストーリー展開が速すぎるのと登場人物や欧州史を知らなさすぎたこともあって置いていかれたので、このレビューをきっかけに見る人用にネタバレ上等で主人公の過去のあらすじを書き綴ります。

~主人公の過去~

爆破の魅力に取り付かれた幼少期、うっかり爆破実験に人を巻き込んでしまい施設に入れられて過ごします。施設で優生学者ルンドボリが出てきます。本作はちょくちょくと欧州史実を絡めてくるんですね。その後スペイン内戦へ参加、フランコ将軍打倒を目指す側で大いに爆破しまくります。あまりにも爆破しすぎて飽きてしまい、偶然が重なってフランコ将軍を助け感謝されます。フランコ将軍の乾杯のシーンで叫んだ人名は、フランコ将軍打倒を持ちかけた人だったりして、実に下らなくいい加減で良い感じです。その後アメリカへ渡航、爆破に関する知識を活かしてマンハッタン計画に貢献。故郷に帰るとスターリンに引き合わされ、原爆開発への参加を要請されます。これを快諾してパーティーになるのですが、その席でうっかりフランコ将軍を助けたと言ったものだから、スペイン内戦時にフランコ将軍と敵対していたスターリンはぶち切れて主人公を強制収容所送りにします。強制収容所には天才アインシュタインとは似ても似つかぬアホ弟がいて、彼のしくじりがきっかけとなり脱出に成功します。強制収容所近くに武器保管庫があったのですが、ロシア艦隊の敗北とそこの大破が重なって、憤怒したスターリンは頭に血が上って死亡。その後、フランスのパーティーでフランス大臣の通訳をスパイと見破った(スターリンとの会合にいた通訳であることを主人公が覚えていた)ことをきっかけに、フランスCIA局長から顔の広さを見込まれて東西冷戦下でCIAとKGBの二重スパイとなり、ロナルド・レーガンの庭を歩いていていたとき拾った音声がきっかけとなってベルリンの壁崩壊を引き起こします。

~主人公の過去、終わり~

主人公は、頭からネジが何本か抜けていて、飄々としていていい味出してます。じっくり考えて行動するのでなく思いつきで行動するため、様々なトラブルが発生するのですが"考えたって無駄。なるようにしかならない"を地でいってなんとかなってしまうのが見ていて本当に面白い。彼は酒好きですが無欲で、いろんな人と飲み交わして打ち解けていきます。ああいうキャラクターなら疑われることもないだろうし打ち解けるのも早いかもしれないなと妙に納得してしまいました。

本作の"現代"シーンで主人公は大金を持って歩いていて、これを見始めたとき奪われてしまうのではないかと思っていたのですが、作中出てくる人は皆お人よしでほのぼのさせられます。追っ手のギャングたちはちょっぴり残念なオツムの持ち主で、コメディーよろしくしくじるところも良いですね。象が立ち上がるシーンには笑ってしまいましたし、そのときのギャングはさぞや絶望しただろうとかえって同情させられました。

1回目の視聴での感想は、これ面白いなぁ(レビューかかなくてもいいレベルかな・・・)。それが、ストーリーや歴史背景を把握して見た2回目には、"こりゃぁ面白い!"となりました。"過去"の登場人物の多さや史実・時代背景を把握できていないと作品が有する魅力の半分も楽しめないのがちょっぴり難点ですね。(個人的にツボに入ったシーンは、アインシュタインのアホ弟エピソードで、兄弟が机に並んで座ってて、兄は難しい数式等紙に書いているのに、隣の弟はマルと棒しか書いていないシーンでした)

本作は、原作"窓から逃げた100歳老人"という人気小説を映画化したものらしく、本国スウェーデンでは、あの"アナと雪の女王"を抑えて堂々週間1位の興行収入を達成するほど人気を博したそうです。きっと、"欧州史こぼれ話(小ネタ集)"満載だからなんでしょうね。内容がわかればわかるほど楽しめる系なんだと思います。原作を読んでみたいと思うほど楽しめました。

本作をまだ見たことのない方は一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。

主な登場人物達
優生学者ルンドボリ、フランコ将軍、オッペンハイマー博士、トルーマン大統領、天才アインシュタインとは似ても似つかぬダメ弟、ソ連の物理学者ポポフ、スターリン、ウラジミール・カルポフ(通訳)、フランスCIA局長ハットン、KGBの人達、レーガン大統領、ゴルバチョフ書記長、物理学者ポポフの息子、ギャング達、ロードムービーの仲間たち(象の"ソーニャ"含む)