GUMI

レヴェナント:蘇えりし者のGUMIのネタバレレビュー・内容・結末

レヴェナント:蘇えりし者(2015年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

混沌とした虚無感。心にザラつきがこびり着く。
この映画世界に関しては、やはり体験だった。


- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
19世紀の西部開拓時代アメリカ北西部。
毛皮を求めての狩猟中のヘンリー隊長の元で現地ガイドとして雇われていたヒュー·グラスは途中ハイイログマに襲われる。

凄絶な爪痕は致命的なもので仲間の手を借りてもグラスは山を越えられず、ヘンリー隊長は罠師のフィッツジェラルドと見習いのブリジャーにグラスの最期を看取ってから隊に合流するよう苦渋の決断を下す。

しかし白人でありながらポーニー族の女性と子をもうけたグラスを良く思っていなかったフィッツジェラルドは騒ぎに乗じてグラスの息子ホークを刺し殺してしまう。
大怪我で身動きの取れないグラスを生き埋めにしてその場を去るが、グラスは地から這いつくばって復讐に生きる。
実話を元にした小説が基盤の作品。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -


ストーリーは予告で観た通り。
でもハイイログマに襲われた際の傷は予告から想像するよりもずーーーーーっと深い。痛い。痛すぎる。


「息子がすべて」
白人とネイティブの間に生まれた子ホーク。
マイノリティ中のマイノリティな親子だからこその執着。現代で「息子がすべて」と言うのと、当時その状況下で言うのとでは重みがだいぶ違っていそう。

もしかしたらグラスは息子が殺されていなかったら生への執着が薄れてあのまま死んでいたかもしれない。
その方がいいのか、そうじゃない方がいいのか…作品としての答えを感じ取った限りでは微妙だ。

相互理解の考え方が根付いてなかったであろう当時には珍しく、本質を見つめ受容するヒュー·グラス
目の前の生活に余裕がなく不必要な事柄に関しては排除するフィッツジェラルド
…2人ともに生きるためには仕方がない、生理的行動を取っているだけ。
しかし分かり合えぬ2人が関わり合うことになってしまったが最期だった。


何より着目すべきはやっぱりレオの瞳の演技。監督も言っていた通りだった。
生の輝きに満ちた目とは程遠い、執念深く鈍く光るあの目は無表情。
なぜあんな目ができるのか…濁りのない無垢な目で復讐を見据える。
文字通り身体を犠牲にして表現されたヒュー·グラスに心酔した。


レオを始め、映像が自分の腕を引っ張ってくるような…臨場感って言葉だけでは物足りないほど引き摺り込まれる感覚。
冷たい風、全身の凍え、傷の痛みを切々と訴え掛けてくる。
観る前は温かかった体がすっかり冷えきってしまうような体験だった。(自分、冷え症ではないです)

息遣い、風の音、冷たい川の音、陽の光、血の色
神からの警告のような音楽
生理的反応に従って行動する登場人物たちetc

自然をこんなにコンパクトに一つにパッケージできるなんて…
ショッキングな出来事を機に起こす人間の行動それすらも自然の摂理の一部として表現しているよう。



原作ではブリジャーはグラスを生き埋めにする前にフィッツジェラルドに殺されるの?
映画では彼の目線が一番常人に近く、正義感は働くもののどうすればよいかわからない視点でのキャラクターだった。
その彼がいないとなると…より逃げ場のない話になりそうだな。




観てる最中の昂りが凄かったからめちゃくちゃ曖昧な記憶ですが…
対象物が右から左に流れていく場面や、向かって左側を見てる横顔が多かったのが物凄く気になってる。

右(過去)⇒左(未来)???
ディーンの法則というものがあるそう。右に強調したいものを配置すると引き立つんだとか。←ググった情報

これまた記憶が怪しいので再鑑賞した際に確認してみますけど、右にグラスで 左にフィッツジェラルドの構図があったような。その場面での彼らの心境を表してるようで面白い。


逆に左から右に流れるシーンもあって。
それがフィッツジェラルドへの復讐を終えて勾配を歩くグラスの後ろを流れる川の方向。(もう一度言うけど、記憶が正しければの話)

その法則に則ってイニャリトゥ監督がこの映像表現にしているなら、胸が抉られ捥げてしまいそうなくらい非業の最後。
だけども、配置や動く方向で何かを象徴してるんだとしたら面白くて堪らない。映画を観る·感じる楽しさを味わえて嬉しくなった。



復讐の先にあるものは何か。

死んだように生きる末路が待つだけの目に見えた。
どんな言葉を投げ掛けるべきか、どんな行動を取るべきかわからず、あの唯一のカメラ目線は目を背けたくなる。

パンフにも書いてあったけど、現代社会にも当てはまる問題が投げ掛けられているラスト…ただただ虚しい。
混沌それすらも自然が引き起こすことなのか。



思い入れが深くなりそうな作品かつ、一度観ただけでは足りそうもないのでまだ感想にまとまりがつきません。もう少し髄に近いところまで味わいたい作品。
とにかく、レオ様がこの役やれてよかったと感無量な気持ち。
GUMI

GUMI