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レヴェナント:蘇えりし者のkarmapoliceのレビュー・感想・評価

レヴェナント:蘇えりし者(2015年製作の映画)
4.3
The Revenant:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督、脚本、マーク・L・スミス脚本、アーノン・ミルチャン製作、マイケル・パンク原作、レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ出演、エマニュエル・ルベツキ撮影、坂本龍一、アルヴァ・ノト音楽、2015年作品。

1823年、アメリカ北西部の極寒地帯。毛皮ハンターの一団は先住民の襲撃を受け、命からがら川を下っていた。ヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)はハンターのひとりで、息子ホーク(フォレスト・グッドラック)とともにガイドとして同行していた。船を捨て山越えルートを進んでいた最中、グラスは見回り中に子連れの熊に襲われ重傷を負う。そのことを機に仲間割れ、仲間の裏切りで、ジョン・フィッツジェラルド(トム・ハーディ)により最愛の息子の命を奪われた男ヒュー・グラスの復讐の物語。

2度目の鑑賞。最初の鑑賞は苦手な復讐もので、内容が重たく観るのに疲れてしまう印象。ただ美しい雪景色や大自然の映像も忘れられず再鑑賞。素晴らしかった!!観直してみて良かった。復讐のプロットは単純で、やはりそれほど好きとは言えないものの、目の前で裏切りにより家族が殺され、自分も一度は死んだ身として極寒で極限の状況下、レヴェナント(甦る亡霊)として彷徨い生きていく姿に、異様に惹かれるものを感じることが出来た。

映画は雪化粧を纏った雄大な大自然の美しさと過酷さや冷酷さを綴られている。極限に於ける人間の本性(本能)が綴られている。そのグロテスクで美しい映像はこの映画でしか観ることが出来ないだろう。

本作の撮影でロケ地として選ばれた場所は、手つかずの自然が残るリアルな未開の土地で、あらゆる場所に点在した撮影ポイントは100か所近くに及んだという。エマニュエル・ルベツキによる撮影は、自然光のみを使うというこだわりのため、1日の内に実際に撮影に使用できた時間はマジックアワー時の1時間半程度。そのために8~9時間に及ぶリハーサルを行い、ミスの許されない状況の中で毎日撮影が行われた。まるで鑑賞者がその場に居合わせたかのように感じる臨場感が得られるのはそのためらしい。

馬に乗って走り逃げ、断崖絶壁から高い大木の聳え立つ森に落ちていくシーンや、死んだ動物の臓器を出して皮の中に潜り込み寒さを凌ぐシーンなど、インパクトのあるシーンが多々あったと思う。ただ水の流れる雪山の光景だけでも、あまりにも美しく、単なる雪景色には観えない。

タルコフスキーのオマージュもけっこう納得で、先ずオープニングの美しいせせらぎ、「惑星ソラリス」がこんな映像で、林の立木は「ぼくの村は戦場だった」の森のイメージ。主人公グラスの妻を回想するシーン、妻の胸から小鳥が飛び立つ、「ノスタルジア」でマリア像から鳥の群が飛び出すシーンを連想。協会の廃墟は「ノスタルジア」の廃墟を髣髴とさせる。グラスの妻が空中浮遊も観る事が出来る。

坂本龍一の音楽も素晴らしく、ドラムセットをはじめとした打楽器群と効果音にも似た何らかの打撃音を多用しながら、深いシンセサイザーの不協和音を幻想的に不安定に奏で行き、弦楽などの生のオーケストラのサウンドが重なっていく。まさしく坂本さんらしくあの人にしか出来ないスケールのサウンドで、映像とのシンクロが抜群だと感じた。分かり易いメロディが無くても坂本さんのサントラ史上でも極上の出来かも知れない。オスカーはモリコーネでタランティーノ作品では仕方がないというか(笑)比べられない類でもあるのかな。

初受賞となったレオナルド・ディカプリオの渾身の演技も素晴らしく、今までのイメージを更新した様な印象だ。

あまり好きな物語でもないと言いつつ、書いているうちに随分惚れ込んでいるのではないかと言う感じになってきた(笑)疲れる映画だと思うが、あまりにも観応えを感じたのでした。この作品は劇場で観たかった。また観たいと思う(笑)






2017/03/19 2.8
正直言って凄く観るのに疲れる作品だった。予告や評判を見て重そうだし観るのが何だか大そうな敷居の高さを感じて、先送りして来たが予想を超えてしんどい内容だった。

ディカプリオは酷い目に合う連続だし・・復讐ものだし・・・。

エマニュエル・ルベツキのカメラワークはいつもながら圧倒的な臨場感で時々驚くほど斬新だったり美しかったりと素晴らしい。ただこれを観て楽しく感じたり心が安らぐことは皆無だろう。タルコフスキーのオマージュだとか芸術性もそれほど感じない。

私的に好みの坂本龍一の音楽も地味で渋過ぎるように感じて少し残念だった。
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