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レヴェナント:蘇えりし者のEditingTellUsのレビュー・感想・評価

レヴェナント:蘇えりし者(2015年製作の映画)
3.8
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥとエマニュエル・ルベツキの最新長編作品ですね。メキシコの鬼才コンビが今回も飛び抜けた作品を作ってくれました。

今回注目したいのは、撮影。毎回エマニュエル・ルベツキ(Emmanuel Lubezki)はアカデミー賞撮影賞の常連で、毎回「これどうやって撮影したの?」と驚かされます。代表的な作品は、スリーピー・ホロウ”Sleepy Hollow (1999)”、ゼロ・グラビティ”Gravity (2013)”、バードマン”Birdman (2014)”などがあります。
この作品で感じたことは、「なんてスクリーンに映し出される世界が広いんだ。」ってことでした。レオナルド・ディカプリオやトム・ハーディーの表情から、雪山や動物たちが歩く背景まで、とても広い世界観を見ていて感じた人も多いんじゃないでしょうか。まるで映画の世界にいるような感覚。
今回エマニュエル・ルベツキが使ったカメラはARRI ALEXA65。65mmフィルム相当のセンサーを使ったデジタルカメラ。さらに彼は24mmやときには12mmのような超ワイドなレンズを使ってほとんどのシーンを撮影しています。それゆえ、かなり広い視野で、かつ奥行の感じられるような、超現実的世界をスクリーンに写しだせているんです。

まぁお金があるからできることではあると思うんですが、どうしてもロングレンズを使って、ラックフォーカスしてみたりしたくなるのが、映画界の伝統と流れ。そのなかで、彼は毎回それをぶち破り、新たなことに挑戦しています。そして毎回作る作品でそれを更新していくのです。つまりは、前回使った技法のいいところを次回の作品で生かしながら、また新たなことに挑戦する。だから、私たち視聴者は新たな映画体験にワクワクする。

是非次回のエマニュエル・ルベツキ撮影作品は、大きな大きなスクリーンで。小さな小さなスマートフォンではこの映画体験はできませんよ!

そしてもう一つは、劇中音楽。2015年の作品だから、この事実は忘れて見ていた。
みているときに、なにかジブリ感を感じた。つまり、久石譲さんのあのストーリーを追い越して引っ張っていくような感覚をもったんです。この感覚は久しぶりでした。ずーっと見ながら、誰がこの映画の音楽担当してるんだろうって思いながら見ていました。
そして、エンドロールで思い出す。そうだった、我らが坂本龍一さんではないか。忘れていた自分が恥ずかしい。。。
あの感覚は、日本で育ち、その楽曲構成に慣れ親しんでいるからなのだろうか。それとも、久石譲さんや坂本龍一さんのような日本を代表する作曲家たちが、世界でもトップであるのだろうか。どちらであっても日本人としては嬉しいのだが。
絶対に見ればわかると思うのですが、ほとんど会話のないこの作品であっても、音楽が引っ張って行ってくれる感覚が感情を動かす。ストーリーの波を前もって予告してくれるように、それまで、背もたれに体重を乗せていた体を、ぐっと引き起こして前のめりになる瞬間が、視聴者全員に同時に訪れる瞬間は映画音楽の真髄だと思います。
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