荒野の狼

くちびるに歌をの荒野の狼のレビュー・感想・評価

くちびるに歌を(2015年製作の映画)
5.0
2015年公開。中学校の音楽教師と生徒の交流を静かに描く132分の映画だが長さを感じさせない流れ。長崎県の五島列島が舞台で、映画がはじまる冒頭の島々を背景とした船上のベンチで新垣結衣が横になっているショットは、一瞬アニメかと思わせるほどの「絵に描いた」ような美しさ。本作の魅力の一つは五島列島のロケ地の美しさであり、主に福江島で撮影されており、教師の新垣と生徒が歌の練習をする鬼岳は、天文台があり、緑の丘陵と四方を見渡せる景観が美しいので福江島を訪れた時は「聖地巡礼」を行いたいところ。福江島の水之浦教会も何度か登場するが、現在は内部にはコロナ禍のため入ることができないが、外観の美しさや裏手の高台に聖像・キリストの磔刑にいたる経過を複数の十字架の形で示した石柱など見どころがある教会(ちなみに、下五島のひとつである福江島の教会は、訪れても内部が拝観禁止のものがほとんどで、訪れても落胆することが多い。一方、上五島の中通島の教会群は内部が拝観できる場所が多くサービスに大きな違いがある)。
五島列島では、映画のロケ地として、「男はつらいよ」が二作品、「悪人」、朝ドラでは「舞い上がれ」の舞台となっているので、そうした聖地巡礼も楽しみたい。現地を訪れると、映画の印象もまた、変わってくるものである。
合唱の映画であるが、ピアニストという設定の新垣の弾くベートーヴェン「悲愴」第2楽章が、本作では登場人物の心を繋ぐ癒しの曲として、効果的に使われており、感動的なシーンになっている。ベートーヴェン自身は、友人を慰めるためにピアノを演奏したというエピソードがあるが、そうしたことを彷彿とさせる音楽の力を感じさせる名場面。