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セッション9(2001年製作の映画)
4.3
マサチューセッツ州ダンバース。その町の小高い丘上に、異様な雰囲気に包まれた建造物があった。今は閉鎖され無人の廃墟と化した、ダンバース精神病院である。その建物が町の役場へと改修されることになり、アスベスト除去作業請負業者のゴードンらは作業確認のために病院を訪れていた。

鑑賞中、背中を伝ったのは置き去りにされた念や記憶だろうか。1871年に建設され1985年に閉鎖されるまでの間、ロボトミー手術や電気ショック療法などの非人道的な治療法が施されていたダンバース精神病院。その地域はかつてセイラムと呼ばれ、魔女に纏わる歴史を持つ。『ウィッチ』で描かれた世界の基になった地域でもあるらしい。これらの情報のインパクトが本作に不気味な陰湿さを常に漂わせていた。極め付けは、実際に使われていた元ダンバース精神病院をそのまま使い、映画の撮影が行われたという事実。リアリティまで加わると、映し出される映像に禍々しさを感じずにはいられない。『ワンダーランド駅で』からの振り幅が凄いなと思ってしまうけれど、その後の作風を考えると監督にとって本作はターニングポイントとなった作品なのかなとも思う。

脳裏に焼き付く周波数で現代に蘇るセッション。ポツンと光に佇む気配は、誰のものであったか。
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