長い、アメリカ人のための映画
原作でもそうなのかもしれないが、井上様を通して語られる禁教の理由が、少し一方的な西洋側の主張であると感じられた
というのは、16世紀終盤に秀吉が出した「バテレン追放令」によると、宣教師たちやキリシタン大名が神社仏閣を破壊させたり、領民を強制的にキリシタンに改宗させたりする事例があり、また別の書状では宣教師の布教活動を「海外領土獲得の一手段としているのであろう」と指摘しているためである
この判断は、中南米の歴史を見れば否定できないものだと思う
重ねて、遠藤周作がどう書いたのかは知らないが、映画を観ていて「異教の国の政府が何となくの理由でキリスト教を必要以上に恐れ、弾圧した」という西洋のキリスト教世界の論理を感じた
では、本作はクリスチャンのための映画か？と言うと、そうでもないと思う
信徒が天国（楽園）のことを「パライソ」（パライゾ:ポルトガル語）と呼んでいて、パードレが「パラダイスのことか？」と聞き返す場面があり、あれ？こいつ何人だっけ？と混乱した
ポルトガル人宣教師がポルトガル語を英語で聞き返すという間抜けなシーンをわざわざ挟む必要性がどこにあるのか、僕には分からなかった
おそらく、原作でパライソ、パライソ言われてるから映画でもその呼称を使ったけど、それじゃ我らがアメリカ人には通じないから換言してやろう、という思考なんだろう
そういう傲慢なのか無頓着なのか、雑なところはいただけない
この映画の個人的な収穫は窪塚くん
あんな小物な役を演じきるファッションアイコンの2枚目が他にいるだろうか？
あと、井上様を演じたイッセー尾形が良い
さらに、修道服姿のアダムドライバーがとてもカッコいい
