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沈黙ーサイレンスーのpeplumのレビュー・感想・評価

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
4.5
世界は祈りを持たずに生きるには残酷すぎる。人間は祈りを持ち続けるにはか細すぎる。黙して語らぬ主に叫びは届くのか。真実は押し黙る棄教者の胸元にある。
世界はこんなに陰惨なのに画面の色味だけはひたすらに美しい。『ヒッチコック/トリュフォー』でも語っていたとおりヒッチコックフォロワーであるスコセッシの“神の視座”ショットに痺れる。アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライバー、リーアム・ニーソンといったスター達も身を削っていたが、やはり段違いにその身を晒していた日本人キャストなくして今作のテーマに血が通うことはなかったと思う。『野火』同様かわいそうなモキチの塚本晋也、主人公ロドリゴの影であり信仰心の試しとも呼べるキチジローの窪塚洋介、通辞として流暢な英語で作品を支える浅野忠信、そしてなにより残酷さを微塵も感じさせず、それが至極当然と振舞う井上筑後守のイッセー尾形。ハリウッド大作なのにこれほどトンデモ描写もなく、泥臭く、キッチリした日本が描写できることに驚くとともに、日本でのロケ撮影を断念せざるを得ない現状に悲しみはある。
しかし、こんな凄い作品が出来たことに感動せずにはいられない。
スコセッシの執念に、日本人キャストの献身に、そしてなにより遠藤周作の慧眼に尊敬を表したい。
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