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沈黙ーサイレンスーのりのレビュー・感想・評価

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
4.6
本作は江戸期における宣教師や切支丹の葛藤の様子を、宣教師側からの視点で描いた物語である。
江戸期の農村や町の様子、当時の食生活から文化まで丁寧に映像化されており、作品にかける思いがひしひしと伝わってくる。

さて、本作の主題設定は「沈黙」についてだ。無宗教者の多くが疑問に思うであろう事柄「なぜ、主は人が死ぬのを助けないのか」「なぜ、道しるべを与えてくれないのか」を映画内で答えている。その解が、沈黙である。つまり再帰的に、答えないということで答えている。ゆえに、その解釈は個人に委ねられる。試練として解釈しても、主の意思として解釈しても。ロドリゴは主の沈黙に対し、仮に絵踏みを行っても、内面的な信仰を捨てなければ良いと解釈したのではないか。それは、最後のシーンから読み取ることができる。また、師匠のフェレイラにとっては、沈黙を棄教すべきという主の意思に聞こえたのではないか。
また、この映画は宣教師側から描かれているが、大名側からの視点に立って見ても面白い。いかに、他国の宗教を阻もうとしたのかその歴史を見ることになる。仮に布教を見逃せば、日本国そのものの存続が危ぶまれることになる。これらは、日本人が海外で奴隷として売買されていた事実を見ても明らかだ。
宣教師も大名もそれぞれの大義に従って行為しており、一概にどちらが正しいかは言えない。
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