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沈黙ーサイレンスーのerityhoneyのレビュー・感想・評価

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
3.3
江戸時代のキリスト教信弾圧の話。

高校時代に小説で読み、心に深い印象を残した「沈黙」(わたしはキリスト教信者ではありません)。キリスト教信者の監督、日本人ではない監督が描く沈黙は、どのような映画となるのか、キーとなる「あのシーン」は一体どう描かれるのか。興味を持って観ました。

かつて日本で、キリスト教信者と神父達への弾圧、迫害が起こったのは事実であり、心が痛みました。信者を殉教に追い込む圧力、神父へ棄教を迫る圧力。人の心をねじ曲げさせる、心理的暴力。遠藤周作のことばを借りるなら「ほんとうに自分が愛したものを棄てる」ということです。日本で生きるわたしにとって衝撃でしたが、海外のキリスト教信者の友人に聞くと、キリスト教を棄てるということは、「死ねと言っているようなもの」、なのだそうです。

人々から崇められる神父を、一転、裏切り者の弱者へと転げ落とす顛末を描いた作品というだけでは語り切れません。沈黙を書くにあたっては、遠藤周作自身の個人的事情が大きく影響していたようですが、時代の大きなうねりが名作を生み、その度に人の心に差し迫り、語りかけてくるのだと、改めて感じました。


余談ですが、個人的には、篠田正浩監督の沈黙の方が、映画としては好きです。画に強烈な印象が残っています。そのせいか、スコセッシ監督の作品の方は、穏やかに感じました。
こちらも一部、監督の個人的事情?が観て取れます(奥様の岩下志麻が、この世のものとは思えないほど美しく撮られていました)。

また、下記ページに遠藤周作について詳しい解説が書かれていました。読みやすくてわかりやすいです。
http://balien.hatenablog.com/entry/2017/01/20/180122
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