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SCUM/スカムの4423のレビュー・感想・評価

SCUM/スカム(1979年製作の映画)
5.0
唐突に始まり、唐突に終わる少年院でのヒエラルキー。その唐突さの中に感情の起伏を導き出す音楽は一切使われず、アラン・クラークのドキュメンタリータッチの映像が淡々と映し出されるだけである。

本作は『気が滅入る陰鬱な映画トップ30』の第19位に選出されたそうだが、それだけインパクトのある作品だということだろう。製作者の一人は本作が古臭さを感じさせないのは外の世界が一切映し出されず、隔離された施設が舞台だからだという。

また、出演している少年たちは本格的な演技の勉強をしていない子供たちばかりだったそうだ。クラークはそんな彼らから決して擬物ではないリアルな演技を見事な手腕で引き出している。映画はフィクションだが、少年たちの凄まじい演技はノンフィクションにしか見えないのだ。

厳しい規律の中で罪を犯した少年たちは同じ服に身を包み、蔓延る暴力と不条理にまみれる。混沌とした世界の中でも自らの意志を頑なに貫き通そうとするアーチャーが本当にかっこいい。彼は言わばヒーローなのだ。我々、鑑賞者唯一の救いなのだ。

同じく少年院ものである『バッド・ボーイズ』にも書いたのだが、外界から完全に切り離され、時が止まった檻の中で繰り広げられる、あまりにも幼い少年たちだけの世界はどこまでも惨たらしく、どこまでも美しかった。彼らは籠の中の鳥。羽をむしられ、今はもう飛ぶことさえ叶わない。それを美しいとさえ、感じてしまう私は異常なのだろうか。
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