テレンス・マリック監督らしき、詩的で、美しく、不思議な世界。
モノローグとして紡がれる言葉は、抽象的で、はっきりとはわからないのだけれど、心の奥底を覗かれたようで、きゅっと胸がしめつけられた。
歌から歌へ。
自分の軸足が定まらず、愛する人と時間を共にしていても、漠然と襲ってくる不安や焦燥。
当初、『無重力(Weightless)』というタイトルだったそう。実際に、無重力で浮いている映像もあったが、まさに、とらえどころのないようにも思えるこの作品にふさわしい気がする。
「解放されたい」という言葉が繰り返される。
自由に浮遊しているかに見えて、何かに縛られている。
「無重力」の軽さは憧れでありながら、その不安定さがおそろしい。
ルーニー・マーラの独特の美しさ、ライアン・ゴズリングの色気もさることながら、創世記に出てくるアダムとイブを誘惑した蛇をイメージしたという人物を演じたマイケル・ファスベンダーが見事だった。この人の優しげな表情の下から時折垣間見える冷酷さがたまらなく怖くて魅力的だ。
2020年の映画納め。劇場鑑賞13本。少ない(涙)。2021年はもっと観たいなぁ。