kanami

パパが遺した物語のkanamiのレビュー・感想・評価

パパが遺した物語(2015年製作の映画)
4.0
映画を観てこんなにも感情が揺さぶられたのは久しぶりだ。
小説家のジェイクは、自分のせいで妻を失い、ショックで鬱病になってしまった。精神病院から退院する時、ジェイクがベッドのシーツの端を神経質に直すシーンがなぜか印象に残った。退院しても鬱病は完治することなく、身体や心を蝕み続けていて、指先から全身へ発作のように痙攣が広がり、感情も今までのように抑えられず、正常な人間関係が築けない。小説を打ち込むタイプ音やペンが紙をひっかく音が彼の時間を支配しているようだった。
娘のケイティは、大学院へ進学し、心理学を専攻して、複雑な家庭環境の子供たちを手助けするソーシャルワーカーになった。しかし、彼女自身も複雑な家庭環境によって愛というものがわからなくなり、健全な男女関係ができず、セックス依存症になってしまう。
誰しも孤独や悩みを抱えている。それでも成り立ちの違う闇はどう掘っても他人の墓だ。愛するということがどれだけ人間活動に必要か。それを息苦しいほど感じ取った。男は愛するものがなくても生きていける?浮気された妻はそう言うが、そんなはずはない。愛すること、愛されること、愛せないこと、それは人生のテーマであり、ヒントであり、試練であり、欠点でもある。
カーペンターズのclose to youが心地よくて、高まっていた動悸を宥めてくれた。
kanami

kanami