「楽園に殺人は存在しない」という壮大な建前のために野放しになっていた殺人鬼を、左遷されたトム・ハーディが追う話。シリアル・キラーマニアならピンとくるかと思われるが、モデルはアンドレイ・チカチーロ。『殺人鬼の存在証明』を見る前にこっちを見とこうかなと思い。
役人には絶対的な忠誠を誓わせ、時に家族を人質にしてその忠誠心を試す。国民を疑心暗鬼に陥らせ、相互に密告させる。困ったら投獄、拷問、自白。そんな楽園=独裁国家の闇が痛いほど伝わってくるのだが、この映画はクライムサスペンスなのでそればかり描くのは主題ではないような。
リドリー・スコット製作でアメリカ映画だから当たり前なのだが、良くも悪くもアメリカ映画。トム・ハーディはカッコよくてそれなりにハラハラはするけど、それ以上でもそれ以下でもないかな。CIAをクビになったリーアム・ニーソンとか酒に溺れてボロボロになったブルース・ウィリスがよくわからん敵と戦う映画と大して変わらない。原作は「このミス」1位なのに…。これは監督の手腕のせいなのだろうか。