カント

アラビアの女王 愛と宿命の日々のカントのレビュー・感想・評価

3.7
史劇。旅行家ガートルード・ベル女史のアラビアン・ロードムービーか。

20世紀初めの中東の歴史(少なくともサイクス・ピコ協定)を知っていると、より興味深く鑑賞できる。
「アラビアのロレンス」の前日譚。アラビアのロレンスを見た方は、より楽しく鑑賞できる。

▼1914年。冒頭の国境分割案。すでにサイクスがガートルードをdisりまくっている所が面白い。列強が勝手に中東の国境を考えた所に現在の中東地域の悲劇が有ります。
▼1902年。イギリスの社交界に倦んでテヘラン大使館へ赴任したガートルード・ベル。ヘンリー・ガドガンとの燃える様な恋。
▼1906年。ヘンリーの死によりアンマン領事館へ。アラブの遊牧民ベドウィンと交流したいガートルード・ベル。死海の東、ベスラの近郊で考古学者キャンベル・トンプソン氏、T・E・ロレンス氏と出会う。
▼ダマスカス英国領事館のリチャード氏との出会い。ガートルードは少数部族ドルーズ族の住む山を目指す。ドルーズ族はベニ・サハル族と対立中。ガートルードの部下オマルはベニ・サハル族で訛りで出身部族がバレれば殺される。
ドルーズ族のシャイフ(部族の長)は意外にも文化人で欧米文学にも造詣が深かった。
▼1915年。ネフド砂漠を越えてハーイルを目指す(ネフド砂漠は「アラビアのロレンス」のアカバ湾、電撃作戦でロレンスが走破した場所)
ガートルードは首長イブン・ラシードがどんな人物か見極めようとするが首長はアザイア族との戦いで不在だった。
イブン・ラシードとイブン・サウード。そしてファイサル王子との出逢い。※ファイサル王子は「アラビアのロレンス」の準主役。

▼詩情豊かなベドウィンの暮らしに魅入られたガートルード・ベル。一応、彼女とイブン・ラシードの接見が本作の山場だけれど……ガートルード・ベルの本当の偉業を数行のキャプションで済ませるのは勿体ない。

▼史実と照合すると…本作中では私利私欲なく旅する事を美化して描いていますが、結局はイギリスが利する為にガートルードの情報が有益だった事は否めないのが残念。
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