kkkのk太郎

不屈の男 アンブロークンのkkkのk太郎のネタバレレビュー・内容・結末

不屈の男 アンブロークン(2014年製作の映画)
2.3

このレビューはネタバレを含みます

実在の人物ルイス・ザンペリーニの戦争体験を映画化。
オリンピック出場経験もあるアスリートのルイに襲い掛かる様々な苦難と、それを乗り越える不屈の精神を描く戦争伝記映画。

監督/製作は『Mr.&Mrs. スミス』『マレフィセント』の、オスカー女優のアンジェリーナ・ジョリー。
脚本には『ファーゴ』『ノーカントリー』の、オスカー脚本家ジョエル&イーサン・コーエン兄弟が参加している。

主人公ルイの戦友フィルを『ハリー・ポッター』シリーズや『アバウト・タイム』のドーナル・グリーソンが演じている。

やれ反日映画だの、やれプロパガンダだのといろいろと言われた映画らしいのですが、内容は全くそんなことはなく、苦境に晒されながらも耐え抜く精神の尊さを描いた作品でした。

映画では主人公のルイがこれでもかというぐらい酷い目に遭い続ける。
飛行機の墜落からの遭難、日本兵の捕虜にされ、虐待&強制労働…
ルイの苦しみをたっぷり描写することで、そこからの解放によるカタルシスを高めようという意図はわかるのですが…

やっぱりねー、退屈なんです。全体的に。
ボートでの遭難までは物語が進むのでそれなりに面白い。特にルイがオリンピックに参加するまで、そしてオリンピックの描写はかなりワクワクします。
オリンピックの開会式で、日本の選手と目が合い互いに会釈する。あそこの描写なんかは上手い。平和の祭典とその後の戦争の対比がしっかりと描かれています。

ただ、ボートでの遭難のシーンはイマイチ。尺をたっぷりとっている割には起こる出来事が想像の範囲内だし、遭難中は物語が前に進まないのでモヤモヤする。
あんなにサメってボートを襲うの?とか、50日遭難した割にはヒゲとかあんまり伸びてないな。とか気になるところもあった。
ただ、この遭難シーンの為に役者陣は相当身体を絞っており、そこは凄かった。ドーナル・グリーソンとかガリガリすぎて心配になる程でした。

遭難から助かったあとは、日本兵の執拗な虐待…
ここはやはり日本人として座り心地の悪さを感じる所。
ただ、ここも描き方に違和感がある。
渡邉睦裕という収容所の責任者。彼は史実上捕虜の虐待を行なっていたという酷い男。
この男が、ルイを執拗に苛めるわけです。
ぶっちゃけここはほとんどBL映画の世界。やけに顔が近い。アンジーの趣味か?
ボーイズ・ラブ的なのはまぁ良いのですが、やっぱり日本兵をあまりに悪く描き過ぎている様には感じました。
渡邉睦裕を屈折したサディストとして描くのはわかるのですが、やはり収容所にはそれなりに倫理観を持った軍人も居たはずです。
そういった日本人とルイの交流の描写もあって然るべきだと思います。そうすればより渡邉の悪さも引き立ちますし。

あとは、収容所のパートからフィルの影が凄く薄くなる。物語から姿を消してしまう。
フィルをルイの相棒として描き、監獄物にはお馴染みのバディ・ムービーにしてしまえばもっとエンタメよりの面白さが出たと思う。

クライマックスでのルイが木材を持ち上げるシーン。あそこが顕著ですが、ルイはキリストと重ね合う様に描かれている。
苦難に遭いながらも、汝の敵を愛するという映画のテーマを表す為には妥当な所だと思う。
しかし、この映画ではルイを襲う苦難にばかり焦点が当てられ、彼が敵を赦す様になるという描写がない!
映画の最後に、字幕とスライドにより説明されるだけ。

いやいや、此処こそが一番大事な所だろー!
PTSDに苦しみながら、信仰と愛により日本を赦す。クライマックスでは長野オリンピックの聖火ランナーとして日本で走る。
此処が大事な所であり、しっかりと描くべき所なのでは?虐待描写に時間を割くなら、こっちを重視しろよ!

渡邉睦裕は戦後指名手配されながらも逃亡の末に起訴を免れた。
ルイが来日した時も、彼と会う事を拒んだという。
過去を乗り越え敵を愛したルイ。自らの罪から逃げ続けた渡邉。
此処の対比こそが最もこの物語が語るべき事であり、そこの描写が抜け落ちていることは勿体ないとしか言いようがない。

全体的に鬱屈としていてわざわざ好んでみる程のものではないと思う。
大森収容所から異動した渡邉が、直江津収容所に居たっていう展開は、ルイのリアクション含めてちょっと笑える名シーンです。
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