ベルモット

アロイス・ネーベルのベルモットのレビュー・感想・評価

アロイス・ネーベル(2011年製作の映画)
3.8
EUフィルムデイズで鑑賞。
歴史的背景や技法などの予備知識ほぼ無しで観たので、恐らく本当の意味では理解できていない部分がありますが、非常に見応えのある作品でした。
そして鑑賞後の監督インタビューも興味深いものでした。

内容としては、あまりオープンに話されない歴史的出来事がテーマだったようです。
第二次世界大戦が終わり、チェコのある地域では移住していたドイツ人が追放されていく。当時チェコ人とドイツ人の国際結婚もあり、家族が離ればなれになることもあった。主人公のアロイス・ネーベルが幼い頃の出来事である。
鉄道員である彼を取り囲む古い記憶は深い霧によって呼び戻される。苦しむ彼は精神病院に通う。原作であるコミックスは3部作まであり、その1部目がここまでで終わる。3部は独立した話で、それらを繋げることに苦労したそうです。精神病院では別の人物が酷い治療を受けていたり、またそこから出た後には親しくなる女性が出てきたり、1人の人物を中心に豊かなストーリーが展開されます。

主人公はドイツ人と接触があったチェコ人なのですが、彼の名前「アロイス・ネーベル」というのはドイツ名だそうです。「ネーベル(Nebel)」はドイツ語で「霧」という意味。反対から読むと「レーベン(Leben)」、「人生」という意味になります。霧が多いその地域で人生を送る男だからというのが由来だと聞いて、素敵だなと思いました。


また、ロトスコープという手法の作品を観るのは初めてで、最初はリアル過ぎる音声と細かい人間の動きに驚きました。
最初に俳優を使って実写映画を作り、それを元にアニメーションを作るという複雑な工程の成果として、リアリティの追求には成功していましたが、正直アニメーションにする必要性は分かりませんでした。インタビューでは原作であるコミックスの絵に近づけたかった、大人に見てもらいたかったと仰っていたのでそれなりに理由はあるようですが、それも後付けで本当は技術的な面で挑戦したかっただけなのでは、と感じました。
でも音の臨場感は素晴らしかったし、霧に包まれて様々な記憶が男を支配するときの光の描写は釘づけになりました。
これが初めての長編作品だなんて信じられない。

質問する勇気がなくて残った疑問は、水道の栓を閉めるショットの意図。何度も描かれて印象的だったのですが…謎に包まれたまま終わってしまいました。


すごい長いけど最後まで読んでくれる人はいるのかしら笑
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